5 失われた紫紋の血縁
5 失われた紫紋の血縁
隊長でないものの隊主会議への参加は要するに重要事項の報告を意味する。莉磨と捺輝の参加が義務付けられたという事実は組織が重要視しているということを無言ながらも肯定していると受け取っていいのだろう。
薄暗い会議室静まり返り一見して冷静な会議と言えるか。
「問題としてとれるようなことはありませんでした。それよりも監視の理由がよくわかりません」
平山が覚醒したという事実を知る者は少ない。隠ぺいする、という行為に協力的なものは多く煉夜達はというとやはり言う気はないらしく報告はない。
「本当になんともないのか?」
「はい。なにも」
「監視する理由がわからない以上、何を報告すればいいのかもわからないですし……」
お互いに透かした顔をしている自覚はある。重いため息に気配が殺気立ち肌を刺激する。
「……平山進次は失われたはずの紫紋(しもん)の血縁だ。まれにうまれる濃い血は人にはおえぬチカラをもたらす。………正直、たまったもんじゃない。……厄介事はさけたい。………意味ぐらいはわかるだろう」
元皇族・紫紋の覚醒とあっては厄介事か。莉磨は予想通りで何よりといった表情を見せる。何を理由に「殺せ」という意味を含めた発言をするのかは残念なことに読み取ることが出来ない。
「一般人ですからなにもなしに始末すれば怪しまれますよ」
捺輝が冷静を装い判断したように見せかけ殺しを送らせようと発言する。特別望んでいるというわけでもないが莉磨が遅らせろと言ったのだからなにか面白いことでもあるのだろう。
「キングとクイーンはお前達だ。二人で決めろ………解散だ」
キングとクイーン、リンガをピラミット上に乗せた時トップに位置する二人をそうさす。紫紋が絶命したのちに枝分かれした中でもっとも血が濃いとされる美月と紅桜がその称号を得ていた。
「どうする?捺輝」
「どうしようもないね」
「今日は全然見えないかも…」
一足遅れて会議室を出て隊舎へと向かう。窓から差し込む日差しが眩しかった。
体育際間近の賑やかな昼食をおえ昼休みにはいる頃だった。教室は騒がしい。やたら元気とでもいうのか、よくもまぁこの日差しの中で走り回れる。
「竹内!」
クラスメイトに呼ばれて急いで机の位置をなおす。
「生徒手帳は?」
「持った!」
慌てるように教室をかけだしていくのはいつも通りか。
男子はいつもこうだ。
「食べたばっかなのによく遊ぼうとか思うよね」
「うん確かに」
遊びたい盛りの男子とは違い女子は女子で固まり教室の窓辺で過ごすのがいつもなみやら当たり前となっている。
「ほら、淋。竹内くん!」
窓から校庭を見渡し風に吹かれる。
「うん」
軽くうなずく早見淋。淋の視線はクラスメイトである竹内海斗を追っていた。
「淋はてっきり野球部の先輩と付き合ってるのかと思ってた」
親友・桜井ゆかりは残念そうに言う。それはおおきな誤解だ。
「彼氏なんかいないよ」
ゆかりのことは見ずに淋はクスッと笑った。