44 宣戦布告Ⅲ
44 宣戦布告Ⅲ
二回目の爆発で廊下がくずれおちる。渉はたまたま目の前を通ったゆかりをとっさにかばう。恭悟は体勢を崩し倒れこむ。運が悪いことに屋根が崩れ飲み込まれた。
ある程度の決壊がおわり静まりかえった。
広大の上に鉄骨は降った。強い衝撃は莉磨にも伝わる。静まりかえり捺輝は動きだす。基礎術で筋力を強化し、広大と莉磨を押さえ付ける鉄骨をどかす。多少息が荒れるが気にする様子はなく広大の首へと手をあて脈をはかる。弱々しく指に伝わる脈は広大が重傷であることを捺輝へと伝えている。
―莉磨も平気だろうな…
捺輝は莉磨の生死を確認せず鳥刈へと近付く。
「大丈夫ですか?」
こめかみから出血しているのはみてわかる。地面におちた黒渕眼鏡のレンズに少しひびが入っていた。
質番隊員が廊下へとかけつけた。そこに倒れているのは3人。ゆかりと渉と、恭悟。誰を優先すべきか見分け一人の質番隊員はゆかりと渉の方へと向かう。傷は恭悟のほうが酷いだろう。出血もかなりの量だ。しかし鍛えかたをみてゆかりの方へと行く。
「聞こえますか?」
質番隊員―新谷良太は二人に触れず声をかける。下手に動かすより先ずは意識の確認をしたかった。
「は……い」
弱々しい女の声。ゆかりだ。良太はゆかりを抱きかかえる渉ごと瓦礫から離す。
「ふぅ」
さすがに二人同時に運ぶのは大変で一呼吸だけ間をおく。
「詩織さん!」
良太は崩れかけた零番隊舎と陸番隊舎へつながる廊下を見て名を呼ぶ。
「誰かいた?」
崩れた瓦礫の間をバランスをとりながら歩いてくるクリーム色のロングヘアに碧眼の莉磨によくにた顔をした瀬口詩織。
「零番隊員と陸番隊員が各一人ずつ、それから女の子がおる」
良太は続ける。
「零番隊員は意識不明の重体。陸番隊員はまましなほうで女の子は擦り傷程度」
そう、と詩織が顔を歪めた。良太はそんな詩織から目をそらし無線連絡した。
鳥刈は血が流れだすこめかみをおさえ立ち上がる。車から豊と椋介が降りてくる。
「僕は平気です。この程度なんともありませんよ」
微笑む鳥刈を捺輝は無表情で見つめる。
「これはかなり重症ですね」
気配もなく莉磨の近くに立っていたリフは呟く。それに捺輝は驚き警戒心を出したまま振り返る。
「顔が怖いですよ、捺輝様。そう驚いた顔をなさらずに…」
捺輝はほっとしたように警戒心をといた。
「早見淋は?」
捺輝の問いにリフは微笑む。
「碧人を向かわせましたのでご心配なく」
一人の女の子は近付いてきていた。それに気付き捺輝は目を細める。
「あの……兄が…」
声を震わせるのは刹那。零番隊の第5席といえど実の兄を慕っているらしい。心配そうに顔を歪めた。