43 宣戦布告Ⅱ
43 宣戦布告Ⅱ
来た道を戻る。爆発まで数分程度。非常口とかかれた扉を勢い良く開け階段をかけあがる。時々後ろを確認し淋がついてきているかを見る。
「ハァハァハァハァ」
淋の息が荒れている。夏輝は足をとめ淋の手をとる。そして走る。さっきよりは速いが夏輝の全力まではほど遠い。淋の息は激しく荒れていて肩で息をしている状態だが一応地上へとあがりきる。誰もいない特別活動室のはじでとまる。淋の手はなんとなくはなさなかった。
広大と捺輝、莉磨の三人が最後の客人を見送る。白石は零番隊舎で指揮をとっているはずだ。広大が一礼し豊と椋介が車へと乗り込む。それに続き鳥刈も車に乗ろうと莉磨たちに背を向けた。
素早く特別活動室から遠ざかるディセントたち。しかし落ち着いてはいた。
その流れに逆らい、渉はゆかりを探していた。特別活動室の通路入り口にたつ恭悟に声をかける。
「桜井ゆかりを見なかったですか?」
恭悟は無表情で小さく首をふる。渉は唇を噛み締め辺りを見渡し探す。
「特別活動室封鎖完了。中には早見淋と本郷夏輝以外いません」
恭悟の報告が聞こえ渉は走った。
音と共に砂埃がまう。
一度目の爆発。
特別活動室の窓ガラスは吹っ飛ぶ。通路への影響はない。少し揺れた程度だ。しかし外では被害が大きかった。
まず音がした時点で鳥刈が足をとめふりかえった。割れてふりそそごうとするガラスを前に広大は莉磨をかばった。捺輝はその場で姿勢をひくくし一瞬遅れて鳥刈もしゃがむ。降り注ぐあまたのガラスは距離的に莉磨の所に多くいった。数少なくいったガラスは鳥刈のこめかみをかすり黒縁の眼鏡を地面へと落とした。捺輝はほぼ無傷で頬に軽くかすった程度。
莉磨をかばった広大はかなりの数のガラスに傷つけられていた。
莉磨が広大に声をかけようと口を開いたとき二度目の爆発は起こる。
崩れそこねていた鉄骨が崩れ割れそこなったガラスと共に降り注いだ。
一度目の爆破の時点で淋と夏輝は地下へと落ちかけていた。二度目の爆発で確実に落ちるとわかったのか、夏輝は淋を抱き寄せる。二度目の爆発の直後床は完全にくずれおち地下へと落ちる。淋は抱きかかえられたままとっさに叫ぶ。
「盾!結!」
盾―小規模の物理的攻撃を防ぐもの。大体の呪術師はこれを使うことができ、殆んどがこの一言で発動する、呪術としては初級編。結―爆風や毒ガス、砂埃等を防ぐ結界で中級呪術だ。それなりの言魂が必要だが上級呪術師は一言でつむぐ。
これら二つの呪術を淋は同時に使う。夏輝は驚いた様子もなくおちた。