42 宣戦布告
42 宣戦布告
莉磨は零番隊舎の隊長室の扉を開け中にはいる。白石が机の上で手をくみ酷く疲れた顔をしていた。
「夏……本郷と淋を送ったのね?」
「そうだ」
莉磨の問いに白石は頷く。莉磨は鋭い視線を白石に送る。
「総隊長様は監理官殿を納得させられないと」
「そうだ」
総隊長の上の身分。全ての許可を与えるものたち。キングとクイーンの下につく存在。
「都合のいいときだけクイーンとキング(の面子)をたてますと」
「そうだ」
莉磨は紫色のスカートと青い薔薇のえがかれたジャケットを揺らし隊長室を出る。わざと扉を音を立てて閉めた。白石は眉間にしわを寄せ大きく溜め息をつく。
「すまん」
そこにいない莉磨へと謝罪をのべた。
地下へと入りそっと扉を開ける。灰色の壁と床。薄暗く続く道を夏輝と淋は警戒しながら歩く。
「先輩…なんでこの前…」
「何も言うな。今度聞く」
夏輝は淋の言葉を遮り奥へと進む。特別訓練室の真下だと思われる場所で足をとめた。
「なんだ…?」
そこには小さな何かが置いてあった。
「爆弾…?」
淋が呟く。夏輝は淋をみる。そしてまわりをよくみわたす。いくつも同じようなものがあった。
「こちら本郷。地下にて無数の爆弾発見。来客、非番戦士(ひばんディセント)を避難させてください。僕らはもう少し探索します」
夏輝は言う。竜一からの返事は聞かない。更に足を進めようとするが一度ふりかえる。
「お前は…上に帰れ。俺が一人で行く」
淋は首を縦にではなく横にふった。
「嫌。本郷先輩が帰らないならついていきます。二人での任務です」
淋は真剣にはっきりと言った。夏輝は淋を強い視線で見つめる。
「早見が来る必要はない。危険なんだ」
「知ってます。危険だからこそ二人で…」
「……」
夏輝は無言で歩き始める。淋も無言のままその後に続いた。
由哉はアナウンスを入れた。低すぎず高すぎない声で。
「申し訳ありませんが、今年の公開訓練試合は今この時をもって終了させていただきます。なお来年は例年通りの予定となっています。来賓の皆様はお早めにお帰り下さい。各ディセントは配置に戻るようお願いします」
連絡の入った来客担当のディセントは動き始める。そう、来客を帰すために。
とはいっても来客としてあつかわれていてもディセントだというのが多い。木暮裕と桐生俊之、水蓮アミカ、天瀬雅哉、海王アクア、冥王サラの6人が組織に現役ディセントとして兄弟姉妹、娘や息子がいる。少し心配そうに、特別訓練室をあとにする。二神伯夜、鳥刈や椋介、豊は特に気にせず普通の表情で動いていた。