39 近付く
39 近付く
朝、目が覚めて起き上がれば背が少し冷たく感じる。
「篤史?」
階段を誰かが上ってくる足音がする。
「なんでもない。千代はこなくていい」
篤史はベットをでてタオルで汗をふく。
「夏か……淋の誕生日まであと少しなのか」
篤史は無意識のうちに呟いていた。
中央本部は蒸し暑さもなくカラッとした天気だった。
正面門を目の前に総隊長兼零番隊長・白石と零番隊副隊長・捺輝が、現在の最高戦力として莉磨が、選手代表として恭悟の四人は立っている。背には特別訓練室という巨大な建物があった。
「今日は監理官殿がくるんだってさ」
「ふ~ん。ってあれ?捺輝さんって髪、紅茶でしたっけ…?」
「黒に染めてたけどやめた。(11あたりからすでに)」
そっと微笑む捺輝。ごつい音と共に巨大な門は開き風が吹く。
「久しぶりにみる」
門内へと入りそういったのは美月家当主の通称・遠矢敬紀。薄栗毛をなびかせ碧眼を輝かせる。
「お久しぶりです、敬紀お兄様。やはり制服はきなれませんね」
ゆっくりと莉磨は一礼する。聖croos学園ヘウェン級の制服、黒いYシャツに朱色のネクタイ、白いスカートを揺らす。
「あと半年ほど、これが正装になりますかね」
捺輝は微笑み言う。微笑む二人に敬紀は微笑みかえし歩き出す。
「たしかに久しぶりですかね。お二方の制服姿は」
煉獄家当主リフこと、通称・煉獄刻人は言った。
その後ろに海王家当主・海王アクアと冥王家当主・冥王サラが通りすぎる。欠伸をしながら通るは天王家当主通称・天王瞬弥。微笑むは水蓮家当主・水蓮アミカ。二神家当主・二神伯夜と天瀬家当主・天瀬雅哉がならんで歩く。その後ろに樋内家当主・樋内隼斗と桜葉家当主・桜葉広大が並び木暮家当主、通称・木暮裕と桐生家当主・桐生俊之が通った。武器の名門家、大和の名を継ぐ煉夜と白水の名を継ぐ刹那が通った。
「……そっか、瀬口は詩織だし暁はロイだからこれで終りか」
ふと莉磨が呟く。
しかし、黒の車は目の前でとまった。
「監理官の鳥刈です。視察にきました」
鳥刈が黒渕眼鏡をくいっとあげる。
「総隊長の白石です。ご案内します」
鳥刈が微笑んだので白石も微笑む。
「本来なら二人をあんないするのに」
恭悟は莉磨と捺輝をみて呟いた。
「あの……」
目の前に一人、女の子がいた。
「遅れました…」
「桜井ゆかりさんですね?」
「はい」
「私が案内しましょう」
莉磨は微笑み一礼した。