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風に吹かれて  作者: lima
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3 桜葉広大

3 桜葉広大


今日もまた昨日と同じ席だった。選手を見るには絶好の位置と言えるか。しかし任務に私情をはさむ気はない。

「必ずベンチの少し離れた一列目指定席なのはなんでかな」

「さぁ。由くんがチケットとってるからね」

特にすることはない。売り子の持ってきたポッキンチョコを一口。

「広大は?」

ベンチの中にその姿が見当たらず捺輝へ問う。

「さぁ。紅い花でも咲かせにいったんじゃない?」

適当な答えとも取れるがあながち間違いではない気がする莉磨。

「紅の血は紅の薔薇を求め、紅の薔薇は紅の血を求める。いい関係だよ」

莉磨に捺輝のその言葉は通じたのか。興味がないなと思いやめた。

「莉磨?」

ほんの少し、莉磨の様子がおかしい気がして捺輝は声をかけた。

「何……考えてたの?」

「何も考えてないよ……」

少なくとも捺輝にはそうは見えなかったがそういうならそういうことにしておこうかとも思う。

「疲れてるの?」

「さぁ」

あいまいな返答をよそに試合は最大の盛り上がりをむかえていた。

「今日も出ないのかな」

「かもね」

昨日の試合には平山は出なかった。出る気配すら無かった。今日も同じだろう。

「平山進次を監視する意味がわからない」

ふと、感じた疑問を捺輝はつぶやく。

「妖気は感じないのに」

会話はかみ合っているようでかみ合ったいない。莉磨のつぶやきと捺輝のつぶやきは別物だ。考えていることが違う。

「何かしってるなら教えくれればいいのに…」

捺輝が思わず呟いた。


何事もなく試合は終わった。やはり今日も平山は試合に出ていない。

「勝ってたからかな」

「関係ないんじゃないかな。それより、チャンスで4番だからとかじゃない?」

口々に予想を言いつつも特別深く考えることはしない。球場を出て昨日の店に向かう。

「いつもは2回も行かないのに」

「仕方ないよ」

今日は広大とあう約束になっている。昨日の様子などの情報交換のために必要事項だ。昨日のようなことが起きなければいいが、と思う。

「広大も信頼されてるみたいだね。壱番隊員が隠密なんてさ」

「桜葉家長男だから?」

桜葉家はたしか数少ない武家の一つだったはずだ。広大は桜葉家現当主であり妹が一人いる。

「違うんじゃない?」

店に入り昨日の席に座る。いつもよりも今日はお互いにおしゃべりだった。普段とはけた違いに言葉を交わしている。

「来るの遅いかもね」

「うん」

昨日とは違い紅茶とコーヒーだけをたのんだ。


予想通り、広大は遅れてきた。頼んだ紅茶は冷え切りもうすぐでなくなってしまうところだ。追加を頼んでおいたのは正解か。

「ミーティングが長いんだよ」

眉間にしわを寄せ、溜め息をつく広大。面倒なのだろう。

「様子は?」

「怪しい気配無し。そこまで仲良いわけじゃないからな」

「急に近付くと煉達に怪しまれる。由くんしかしらないんだから」

情報がかりとして求番隊員の天瀬由哉が任務に参加しているがあまり知られていない。天瀬家といえば数少ない貴族で、由哉は次男。

「うかつなことできんな」

運ばれてきた熱いブラックコーヒーを一気に飲み干す。

「次は?」

「メールする」

ひらひらと軽く手を振り帰路を別にした。

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