37 実行Ⅴ
37 実行Ⅴ
トーナメント表と通告書をもちいつもの場所へと急ぐ。階段をかけおり左にまがる。扉を開ければ渉は椅子にすわり眠っていた。
「keep our promise.」
「me too.」
合言葉をかわしゆかりは2枚の紙を渡す。
「実は私宛てに招待状が来ました。見にく予定です」
ゆかりは微笑む。渉はなにも言わなかった。
ロッカールームで試合前の練習を終えた篤史は着替えていた。広大は無言で中にはいる。ロッカールームには二人きり。無の時間が過ぎる。
「ピアスしてたっけ?」
広大の耳に小さく輝くローズクオーツの石に気付き篤史はふと声をかけた。
「穴は開けてました。莉磨と契約した者は全員開けてます。篤史さんこそ、その左胸の傷は……」
「桜葉と同じさ。同じものがあった」
篤史は眼鏡をかけ無表情で答える。
「いつもはコンタクトなんですか…?」
「いつもは眼鏡。練習と試合だけコンタクト」
無言になる。篤史は荷物をもち立ち上がった。
愛らしい瞳が輝く。ソラトと姿はうりふたつ。その少年は微笑む。
薄暗い部屋の中、死体は転がっている。手足をもがれたその死体は赤薔薇の絵がかかれたジャケットをきていた。
「ねぇ陸斗。つまらないな」
無邪気そうにいう。
「シエル様。もうおやめになったら……」
その少年―シエルに制止を求め声をかける青年―陸斗。シエルから笑みがきえ無表情になる。
「何か文句が」
凄むシエルに威圧され陸斗は頭をさげる。
「そういえば最近誰かと連絡とってたね」
シエルの言葉に陸斗は一歩下がりそうになる。それを必死に堪えればシエルは言葉をはっする。
「紅の薔薇は紅の血を求め紅の血は紅の薔薇を求めると誰かが言ってた」
笑みを浮かべるシエルに陸斗は震えが止まらなかった。
豪華な部屋に人形のような小さな少年―ソラトと陸番隊色の紫色の薔薇のえがかれたジャケットをきている青年―夏輝はいた。
だだっ広いその部屋に二人きり。重たい空気を漂わせていた。
「気を付けてね。きっとシエルが動き出すよ」
「おそらく組織も本気で動き出します。莉磨さん達とくめばシエル共々潰せると……」
夏輝の話の途中、誰かは部屋の扉を乱暴にあけ入ってくる。ソラトと同じ色の瞳に髪。人形のように整った顔。ソラトより背は高く夏輝より小さい。
「梨磨……」
「出てって!夏輝……いつもいつもよくわかんないあんなヤツの名前よんで。私と同じ名前なんかでさ」
強気の少女―梨磨は夏輝を強く困らせた。