36 実行Ⅳ
36 実行Ⅳ
恭悟は零番隊舎の自分の部屋に鍵がかかっていることを不思議に思った。結構前に来たときはかかっていなかったはずだ。
ジーパンのポケットに手を入れ部屋の鍵を探す。左ポケットから出した一本の小さな鍵を目の前のドアのぶにいれまわす。
ガチャリ。
チーム寮とは少し違う音をたて鍵があく。ベットの中でもぞりと何かが動いた。
「………」
一歩二歩と静かに近付く。ベットの中にいた莉磨はそっと起き上がる。
「この暑い中よく布団にこもるな」
「もうこんな時間?」
莉磨は目をこすりベットから出る。裸足のまま床を歩き大きく延びをした。
「由くんは?」
「たぶんチームの寮。今から行くけどどうする?」
莉磨はこくりと頷き行くと答えた。
球場入りが始まる30分ほど前。ロッカールームで黙々と準備が進められる。試合と練習の時だけコンタクトをつける篤史。異様に重たい空気は話すことを許さないような雰囲気だった。
「どないしたんやろな」
平山が突然皆に聞こえる声で言った。
「多分大きな戦がある」
博紀が小さな小さな声で呟くが静まりかえっているロッカールームでは響く。
急に久保はとなりに座る篤史の頭をなでた。
「そーいうの俺の仕事」
矢野の呟きに平野や敬士、煉夜が吹き出した。
車の助手席に莉磨は乗り込む。シートベルトをし運転席に座る恭悟を見た。
「時間が無いな……」
恭悟がアクセルを踏み車が進む。少し急発進だったのか莉磨の躯が揺れる。法廷速度より少し速いが莉磨は何も言わない。
「ヨシくんに何をさせんの?」
「……戦力が大きくわかれてる。もしかしたら今持ってる戦力じゃ足りないかもしれない。由くんに細かい計算してもらう。特にシエルの戦力が気になるからね」
赤信号になり恭悟はブレーキを踏む。また急だったのか莉磨の躯が大きく揺れた。
「戦争でも起こす気?」
「出来ればしたくない」
無表情のまま莉磨は言う。恭悟は青信号になると同時にアクセルをふんだ。また莉磨の躯が揺れる。
「運転あらいわね」
「先輩に似たのかも。ヨシくんにも言われた」
黄色信号をアクセルを踏み込み進む。次の信号には間に合わずブレーキを踏んだ。莉磨の躯はツーインテールと共にかくんと揺れた。