31 動き出すⅢ
31 動きだすⅢ
静かな朝でも教室は騒がしい。名門校とはいえどやはり一般的な中学生には変わりがない。男子も女子もそれぞれの話題で盛り上がっている。
ここ最近、竹内の調子がおかしい。体調は問題が無さそうだが一人、自分の席にすわり一日中ぼうっとしている日が続いている。
「席に座って」
チャイムと同時に担任(女)が教室に入ってきて椅子を引く以外の音がなくなる。
「今日は転入生がきてます。入って」
入ってきたのは小さな(?)女の子。薄茶のショートヘアにこげ茶の瞳、目鼻だちはくっきりしている。
「初めまして、桜木ルナです。よろしくお願いします」
予想通り元気な声とハッキリした一つ一つの動き。ゆかりは何となく感じる。
―あの子、ディセントだ。
「どうも」
気付けば少女―桜木ルナはゆかりの隣にいた。
「今日から隣の席です」
笑顔を見せるルナが隣なのは偶然か、仕組まれているのか。前者であってほしいとゆかりは思うがおそらくは後者だろう。
大きな欠伸をしながら授業を受ける。寝てしまいそうになっているのは普通科S級では隼斗だけで、それを無理矢理起こすのは隣にすわりいたってまじめに授業を受けている碧人だ。
久しぶりの学校だからか眠気が倍の様な気がする隼斗。
「起こすなよ」
小声で碧人に言い机に顔をふせた。
中央本部の収集室では荒波慎吾が忙しそうに素早く電卓を叩いている。そのとなりでは由哉が申し訳なさそうに座っていた。
「すいません。ホント…」
「いいよ別に」
由哉の謝りに慎吾は笑顔で言う。陸番隊員としてどうなのかと思うほど優しい慎吾は大体なにかに巻き込まれていた。
「商業科出身だから電卓結構使えるし……」
慎吾がやっているのは今月の…まぁいろいろな大人の計算とそれの記録で本来求番隊員の仕事だ。
「ホントすいません。みんな北の方とかに飛ばされちゃって」
いつにもなく申し訳なさそうな由哉はレアな気がすると莉磨は言うだろうと慎吾は考えた。
「失礼します」
その言葉と同時に扉があき莉磨が入ってくる。
「零番隊の損害報告ね」
結ばれていないクリーム色の髪が揺れる。碧眼は収集室外からの光に照らされる。碧人や慎吾も莉磨と同じ碧眼なのに何かが違う。
「ツーインじゃないんだ」
由哉は莉磨から一枚の紙を受けとり一応目を通す。
「あっ!詩織さんと由紀さん、生きてたみたいですよ。しかも質番隊の4席と隊長らしいですよ」
「どーでもいい」
莉磨はそっけなく答えた。