30 動き出すⅡ
30 動きだすⅡ
間に誰かが入る。
篤史だ。
「パ……パ?」
淋はただ驚く。どうしてここにきたのか。
「どーも久しぶり、隼斗」
隼斗の本気の殴りを片手で受けとめ平気な顔をしている篤史。隼斗はただ驚いていた。
「どうしてここに…」
「びっくりした?……なんてね」
篤史らしくない言葉と共に隼斗は勢いよくその場に倒される。
「??」
「特殊能力ですか……」
夏輝はいつのまにか篤史から距離をとっていた。
「ん……あぁそうだよ」
「能力の分解……まさかまだ生き残っていたなんて……」
そっけなく無表情で答える篤史に対し夏輝は恐怖と驚きの表情を見せている。
「裏の組織が無理矢理つくった……人工的にうまれた能力をもつ唯一の……能見家がまだ続いていたなんて」
「?」
「表向きには能力のよみときといわれているが実際はそんなもんじゃない。能力を一時的にも完全にも分解することが出来る。そんな能力あっちゃいけない。だから確にに全員処刑されたはずなのに……」
隼斗は起き上がり距離をとろうとするが篤史の握る右手がふりきれない。
「あぁごめん。痛かった?」
篤史は隼斗の右手をはなす。
「なにもしらない。なにもきいてない…そういうことにして解散しようよ?」
篤史が笑みをうかべる。夏輝も隼斗もただ黙っていた。
ほとんどなにもない壱番隊舎の一室で広大が溜め息をつく。
「どうしたんですか?」
「いや……別に」
広大はベットに横になる。
「ってかなんでお前はこんなとこにいんだ?」
椅子にすわりノートパソコンをひらいている由哉。
「いや……べつに」
「チームメイトでもねぇのに」
広大はそのまま眠ってしまおうと目を閉じる。
「あっ!刹那ちゃん無傷みたいですよ」
由哉は広大にいう。
「あっそ」
広大がそっけなく答える。
「気にならないですか?」
「別に」
「妹なんですよね?」
「そうだよ」
広大は大きな欠伸をする。あいている窓から風がはいりカーテンが揺れる。
「幻想と呼ばれるほど呪術を使いこなすんだ。平気だろ」
風はまだやまない。カーテンは揺れ続ける。日差しは暖かい。寝るのにはちょうどよかった。
最後の一文が目にとまる。
『keep our promise』
「何か約束したっけ?」
ゆかりは考える。
それは秘密の暗号だった。