28 始まりⅤ
28 始まりⅤ
しぼりこめばいい。誰が裏の組織に所属するのか。まず、それなりに信用されている者。
隊長各全員と第5席。それから由哉や竜一等の求番隊員があてはまる。
次に、隠密技術の高い者。
慎吾や捺輝など陸番隊に所属している、していた者している者があてはまる。
その中でも冷徹で優秀な者。
莉磨はすぐにうかんできた。
本郷夏輝。
一人だけ。
慎吾は優しすぎる。捺輝はそんな無駄なことはしない。自ら殺しにでる。残るのは本郷夏輝。
否定する要因が見付からなかった。
「終った……」
フォリンの全滅を確認しその場に倒れこむ広大。
莉磨は大剣をしまい一人歩き出した。
「夏輝!」
目の前を、先を歩く後輩・夏輝を呼びとめる。
「何か用ですか?」
夏輝は足をとめ振り返る。
「夏輝でしょ?裏どりしたのは…」
「バレましたか……流石です。彼方だけはわかりましたか」
夏輝がうっすら笑みを浮かべる。
「どうしますか?俺を組織の長にさしだしますか?俺より彼方のほうが信用されているでしょう」
「組織のためだけには動かないよ。……それに、有能な後輩をさしだすほど私は冷酷じゃない」
「そうですか」
夏輝はまた歩き出す。その背を莉磨はただみていた。
ゆったりとした風が吹く。本部内には任務を終えた上位席官が集まっている。一人一人始末書をかき、総隊長兼零番隊長の白石水輝へと提出する。それに一枚一枚判子を押していく白石。莉磨はその様子をただみていた。珍しく心ここにあらずの状態でいる莉磨は、今まで一緒にいた捺輝ですら何を思い、何を考えているのかわからなかった。
「おかしいね。たしかに最初は同じだったのに」
莉磨が小声で呟いた。捺輝はそれで誰のことを考えているのかがわかった。
「彼は彼で、違うことをして同じことを考えていると思うよ。僕………俺にはになってない」
「俺……ね」
莉磨は溜め息をついた。その姿は10年程前の殺しを不得意としていたころの莉磨そっくりだった。