27 始まりⅣ
27 始まりⅣ
家に帰ると手紙が一通届いていた。
『ゆかりへ』
きっちりとした癖のない字で書かれている。
「?」
思い出せずとりあえず封をあけ紙を開く。
『ゆかりへ
この手紙が届いたということはもう学校へは行っていないと思う。
突然だけどこれから大きな戦があるため、学校へは行けない。今までありがとう。盗聴等の恐れがあるため携帯での電話やメールは、今後一切出来ないと思う。また、学校には既に転校届けを提出したので、戦で勝ち残れば私は西地区の本家へ戻り自宅学習をすることになるため、恐らく二度と会えないとおもう。もしなにかあったら隼人の通う「魁central学園」に『S級生 樋内隼人』宛てに手紙を出してください。
今までお世話になりました。
ごめんね。ホントにごめんね。
keep our promise
早見淋』
癖のない美しい手本のような字でかかれた手紙は後悔していたゆかりの心の古傷をえぐった。
おかしい。
莉磨は頭をフル回転させた。
「侵入者…ね……」
まず感じたのはフォリンの動き。壱番隊長の侑士と3席の広大がいるのにもかかわらずレベル15以下のフォリンごときに手間取っていること。二人の苦手な、ななめ左後ろから攻撃を決めとしている。
―気のせいかな。
そう思ったときに由哉からの連絡が入る。
「由哉です。本部にフォリンの大群が押し寄せ………………」
本部のまわりは塀に覆われ越えられるものじゃない。門はIDかパスワードが必要だ。どちらもディセントまたは関係者にしか知らないし持っていないもの。たとえ入っても本部内は複雑な構成になっていてなれないと行きたい場所に一直線には行けない。
―なぜ?
考えられるのは一つ。
表にいる裏の戦士。裏の組織のディセント。
―誰が?
問題はそこだ。誰がそれかがわからなかったら問題は解決しない。
「はやくおりてこい!」
インカムから広大に声をかけられ下におりた。
手紙を読んだゆかりはなきたかった。淋が自分に手紙をくれたことが何を意味するのか、最後の一文が何を意味するのかわからないけれど何故か、なきたかった。涙をこらえて手紙を書く。「ごめん。ありがとう」と。
ゆかりは淋を拒絶したことが悔しかった。