21 接触Ⅲ
21 接触Ⅲ
どうするか隼戦は悩んでいた。どうしようもないがなにもせずにはいられない、そんな状況だった。
「隼戦!」
碧人はまわりを見渡し全体を確認する。
「俺がきたときはこうでした」
隼戦は一歩後に下がった。
「そっか……」
碧人は金子から淋を受けとり治療を始めた。傷口に手をかざし何個かの言霊を言う。
少しずつだが傷がなおっていく。
「碧人!隼戦!」
莉磨が到着し淋の様子を確認する。
「無線が通じないから嫌だな……ここ」
何かを探すようにまわりを見渡し軽く溜め息をつく莉磨。
「なにか探してるんですか?」
「いや……」
「まわりにはなにもなかったよ」
いつの間にか莉磨の後ろに恭悟がいた。
「そう……か」
溜め息をつき遠くをみる莉磨。
「碧人と隼戦は中央本部に戻って。恭は私と少しみまわりをしよう」
各自頷き行動にうつった。
もう空は暗い。風も冷たく軽く吹き付ける。
「何を見たの?」
「いろいろ」
莉磨の特殊能力のひとつ・未来予知。そんな高度な能力をもってうまれる家柄など決まっていた。
「やっぱり」
莉磨は急に足をとめた。目の前を見ると一人の男が倒れている。
「誰?」
「上野博紀」
莉磨は脈を確認する。重傷をおってはいるもののいきていた。
「恭は博紀を本部にはこんで」
「莉磨は?」
「ちょっとね」
莉磨は更に暗闇の中へと足を踏み入れた。
暗闇の中に風が吹き抜ける。黒いマントを揺らし明かりのつく本部を見つめる。
「もうすぐだ……」
低いその声は暗闇に消える。
「なにかようですか」
碧人がその存在に気付き声をかけた。
「いや。寮に帰るか迷ってるだけだよ」
「失礼ですが所属はどちらで?」
碧人は不審に思い問うた。隼戦は持っている日本刀に手をかけた。
「陸番隊第5席本郷」
「そうですか」
碧人と隼戦は一礼し本部の中へと入った。