16 かわりゆく日常
16 かわりゆく日常
昼休みもあいかわらずで誰も三人に声をかけなかった。
「ねぇ。早見淋を呼んで」
赤色の名札をした三年生にいわれるが誰も声をかけようとしなかった。
「!…委員長」
淋は席をたち廊下にでる。
竹内は淋をじっとみていた。
「なんでここに……」
「元気ないね。何かあった?」
大蔵の問いに淋は答えなかった。
「……あんとき俺、なんも出来なくて悪かった」
大蔵が全てを覚えていることを思い出した淋は大蔵の顔をみれなかった。
「守れなかったのは……何も出来なかったのは私です。あやまらなきゃいけないのも…私です」
淋はそろしかいわなかった。いいようもなかった。
「転校したり…しないよな?」
大蔵は淋にとって意外な問いをしてきた。
「先輩は…どうしてほしいですか?」
問いに困った淋は逆に大蔵に問いかえした。
「俺は……いてほしいかな。なんでもいいからさ。元気にしててよ」
「………そういってくれると……嬉しいです」
淋は一礼して教室に戻る。それを見届け大蔵も階段をおり自分の教室へと向かった。
携帯電話がなる。普段はならない仕事用の黒い携帯電話が。
「………」
「求番隊由哉です。緊急連絡のため電話させていただきました。零番隊莉磨さんでよろしいですね?」
「うん。それで?」
わざわざ電話してくるなど余程のことがあったのだろうか。
淋は荷物をまとめ教室を出る。部活には出る気がなく階段をおりる。下駄箱に金子がよっかかっていた。
「よ!帰ろうぜ」
金子は覚えているはずなのに何事もなかったかのように接する。
「何かあった?」
金子もまた大蔵と同じ問いをしてきた。
「なにも」
「そっか」
しばらく無言のままならんであるく。何を話せばいいかわからなかったから。
どんな連絡なのか莉磨は冷静な顔付きになった。
「零番隊第14席大畠由理の死亡が確認されました。次の14席は早見淋です。18席19席他は一つ昇格。25席には中山美鈴が入ります」
「それだけで?」
その程度のことでは普段電話などしてこない。任務書と一緒に紙が届く。他にも何かあったのだろうか。
「中央地区の警羅班が全滅しました。現在、本部に人手が足りていません。できれば直ぐに来ていただきたいのですが……」
由哉の声は冷静だが早口だった。内心焦っているのだろうか。
「他に誰が」
「捺輝さんと忍足隊長、慎吾さんを呼びました」
「わかった。行くよ」
溜め息をつき電話をきる。私服のままIDをもち部屋をでる。
「お出掛けですか?」
「本部に」
「そうですか……ひとつだけ。………溜め息は幸せを逃がしますよ」
リフが笑っているのはみなくてもわかった。