15 戻らない日常
15 戻らない日常
西地区の端にある豪華な家。扉を開けてなかにはいる。
「おかえりなさいませ、莉磨様」
紫色の瞳をした銀髪の男が一礼した。その男は身長が高くスラッとした体型だった。
「リフか……」
莉磨はきていたパーカーをリフに手渡した。
「ロイもいますよ」
リフが微笑んだ。灼熱の輝きをともす瞳・灼眼と灼熱の炎の髪・炎髪を持つロイはリフとは裏腹に不機嫌そうに出かけるようだった。
「何かあった?」
「……白石隊長が急にこいって」
「めずらしくもないじゃんよ」
ロイが面倒そうに出ていったのを見届け階段を上がり自分の部屋へと向かった。
いつも通りの賑やかな教室。何事もなかったかのように男子も女子もお互いにふざけあう。
三人以外は。
竹内はグループ内にいるがあまりはなさずゆかりと淋は自分の席に座り浮かない顔をしていた。
「ゆかり、どうしたの?」
一人の女子が声をかけるがゆかりに反応はない。
「ねぇ、ゆかりってば!」
「うるさい!!」
ゆかりが大声を出したとき賑やかだった教室が静まりかえる。
「ご……めん」
静まった教室が騒がしくなる。
「どうしたんだろうね。淋もゆかりも」
「竹内くんも静かだし」
女子は三人を見てこそこそとはなす。
「海斗と早見、わかれたのかな?」
「さぁ。でもそうっぽいよな」
男子は堂々とそんな話をしていた。
写真を見つめては溜め息をつく。家族で撮った最後の写真。父と母と兄二人と双子の妹が一人と自分の映ったたった一枚の写真。
「昔に戻りたいですか?莉磨様」
いつのまにか後ろにはリフがいた。
「戻りたくても無理だよ。両親はとっくに死んだ。敬紀はどこにいるかわからないし由紀と詩織はきっと二人でなんとかしてるよ」
莉磨はパソコンを出し報告書をまとめる。
「もう少し感情をおもてに出してもよろしいのではないでしょうか。あのときからずっと……」
「リフにはいわれたくないかな」
莉磨は大きな溜め息をつく。リフには哀しそうに微笑んだようにも見えた。