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風に吹かれて  作者: lima
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94 展開

94 展開


急な呼び出しに戸惑いつつも収集室へと急ぐ。普段着の上からジャケットをはおりノックを二回。

「失礼します。およびですか」

呼び出される要因を考えながらも刹那は冷静を装う。莉磨はいつも通りだ。

「記憶は?」

「ぇ…」

主語のない唐突な問いに刹那は装ったはずの冷静さを吹き飛ばした。

「天瀬貴哉に消された記憶は?」

フリーズした思考回路を再起動するのに数秒をようし刹那の返答は遅れる。

「戻っていません」

「戻ることは?」

「無いと思います」

唐突な問いに混乱しつつも刹那ははっきりと答えた。

「そう……残念」

莉磨の呟きの意味は刹那には理解することが出来なかった。

「なんでもない。平山進次と早見篤史の妖気を捕促し監視して。たぶん、組織のものにはひっかからないから」

「了解。やってみます」

刹那は目を閉じ集中を見せる。

「ロイ、きこえる?」

莉磨は仕事用の携帯電話を取りだしロイへと繋ぐ。

「頼んだよ」

一言だけ告げ電話をきる。その一言は出動の合図。莉磨の表情は無から冷たいものへと変わる。莉磨にとってここから先の未来などある程度決まったも同然だった。


足音に警戒を見せるも現れたのはみしらぬ顔ではなかった。もっとも、いままで見たことのない表情で立っていたのだが。

「なんの……用ですか…」

拓也はきかなくてもわかっていた。それでも何故か口から出たのは返答のわかりきった問い。

「千代はどこにいる」

篤史の声は低い。淡々と冷静を装いいたって静か。篤史が一歩二歩と近付く。遅れ気味に拓也は半歩さがり間をとろうとする。

「黙秘権なんかあると思うなよ?」

「知らない」

問いであり問いでない篤史の言葉と威圧に拓也は大剣をつくりだしたまま二歩三歩とさがる。いつもよりも大剣が重く感じた。

「僕は知りません。僕がやったのはここに連れてくるまでです」

拓也は焦りと恐怖を押し殺すように早口で言った。朧に大剣を構える。

「そうか」

篤史は静かに拓也の腕を掴んだ。大剣を持っているのは逆の手のはずなのにも関わらず振り上げる事が出来ない。

「でもたぶん…この屋敷のどっかにいると思いますよ」

拓也はそう告げ怯んだその隙をつくように手を振り払い強引に能力を施行する。反応が一瞬遅れ篤史は掴んだ手に力を入れた。同時に能力を使おうとするも間に合わず拓也と共にその場から消えた。


裏口から抜け出しておいたのは凶とでるか吉とでるか。半ば賭けにも等しい状態のまま外に出た結果、凶だといえるだろう。

「張り込みかい?」

ふざけ口調で問うも正面に立つ少年から返答などこない。

「負けたね、椋介」

「ああ」

ふりかえることなく豊が後ろへ問えば短い応えがくる。少年は灼熱を連想される瞳を揺らし静かな風に髪をなびかせた。

「クイーン…いや、架聖莉磨も抜け目ない」

そう呟くのは椋介で少年は― ロイはナイフに手をかける。ロイの表情はすんだもので豊から目をそらすことはない。ロイはゆっくりとナイフを引き抜き逆手に握りしめる。躊躇なく二人を切り裂いた。あがる血しぶきは少なく痛みすらも感じさせることなくただ静かに二人の意識は意識は沈む。返り血は一滴たりとも浴びない。地面は赤黒い液によって染まった。



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