(6)
頬杖をつきながら真剣な視線を向けてくる男に観念して、それで済むのなら、と思いユメはポツリポツリと話し始めた。
「16年前――私が3歳のころ、交通事故で両親は死にました。そしてそれから、私は父方の祖母に育ててもらっていました。祖母は、たとえ私が死んでも、あなたが自立して生きていけるようになりなさい、といつも言っていました。だから、教育もちゃんと受けさせてくれたし、大学受験もするようにと言ってくれました。そして、私は昨年の春から、そこの大学の工学部に通えることになり、祖母は厳しいながらも、貯金と年金を切り崩して、私の学費を出してくれていました。でも、私はそれが申し訳なくて、やっぱり大学をやめて働くといったとき、祖母は珍しく怒って言ったんです……」
「しっかり勉強して、大学を出て、社会のために、そして人のために働きなさいって」
「良い人に育てられたんだね、君は」
男は少し掠れた声で言った。
「でも、その祖母も、死んでしまいました。祖母が亡くなった時、大学を辞めようとも考えました。でも、それじゃ、祖母の意志まで失くしてしまうことになる。そんな理由をつけて、私は祖母の貯金と保険で降りたお金を使って、大学に通い続けました」
ユメは一度言葉を切り、目を瞑った。
「そんなことをしていたから、きっと罰が当たったんです……」
「昨夜、叔母が現れて、突然、出て行けと言われました。大学も辞めて、もうすぐハタチなんだからやっていけるだろうと」
「……それで、君はもう諦めて、死のうとでもしてたわけか」
男はまた新しい煙草を咥えて、横目でユメを見据えた。さっきと打って変わって冷たい目だった。
「死のうとなんて……していません」
ユメは男を睨んで、反発した。
「ただ、どうすることもできなかっただけです」
ユメが言い終えると、男はぷっと吹き出した。




