(4)
「どうしたの?」
男性の声が響き、部屋の扉がゆっくりと開いた。男性にしては高めだが、少し掠れていて色っぽい。そんなことを思った自分を恥じて、シーツに身を隠し、その隙間から男の様子を窺った。
男は20代半ばに見える青年だった。長身で顔は整ってはいるが、シーツに潜るユメを見て皮肉っぽく笑っている。その笑い方が馬鹿にされているように感じて、腹が立った。
「ねえ、どうして隠れるの?」
「……」
沈黙を保つユメに男は短く嘆息してから言った。
「頑固だね。昨夜はあんなに素直だったのに」
男の意味深な笑み、言葉にユメの頭は、撃ち抜かれたように衝撃を受け、ユメは思わずシーツを舞い上げた。
「どっ……どういうこと!?」
顔がかあっと熱くなり、叫んだユメを見て男は少し吹き出して、ケラケラ笑った。
「少しからかい過ぎたかな。ごめんよ。まあ、下に降りておいで。朝ごはん、用意したから」
そう言い終わると、男は部屋から出て行った。
部屋にはユメ一人が残され、また静寂に包まれた。素直に男の言うことを聞くのは気に食わなかったが、お腹が空いたのは事実であり、ユメが今頼れるのはあの男しかいないということも分かっている。
ユメは小さく唸ってから、ふらふらとした足取りで部屋を後にした。