(14)
錆びた空気。
湿気にやられた襖に、薄い灰色の壁。
すり減った畳が敷かれた六畳一間の、日当たりの悪い部屋。
藤木は、隅に敷かれた薄そうな布団に包まって眠っていた。
周りに誰も住んでいないせいか、部屋の中は静まり返っている。
ユメは、この空間がひどく苦手だった。
「店長、起きてください」
布団の横に膝をついて呼びかけてみるが、藤木は微動だにせず、死んだように眠っている。
「店長、店長…」と体を揺すった。それでも藤木は起きてくれない。
ユメは少し腹が立ったので、眠る藤木に文句を言ってみる。
「勤務を始めて3日しか経ってないただのバイトに、店まかせっきりにして寝てるなんて絶対おかしい。おっさんのくせに……何こどもみたいに……ぃっ!」
ぼすっ
3日前のように、また腕を引っ張られ、気づけば藤木の胸にダイブしていた。
どうやら藤木はこの手法が得意らしい。というより、何故いつも不意を打たれてしまうのか。
そんなことを思いながら、藤木の胸から体を起こそうとしたが、藤木の腕にそれを阻まれ、後頭部を手で掴まれて顔を藤木の胸元に押さえつけられた。
ちょっと待てよ。
これって、抱きしめられてないか……。
サァ……と血の気が引く音が聞こえた。これはまずい。
そう思って、ユメは必死に暴れたが、暴れるほどに不思議と布団の中に引きずられていく。
息苦しさと、藤木の力の強さに冷や汗が噴出してくる。
「てんちょ…店長!やめて!」
「君はまだ、自分の置かれてる立場が分かっていないみたいだね」




