(13)
「モーニングお願い。ブレンドコーヒーで」
「かしこまりました!」
慌ただしいユメの足音が店内に響く。ユメの勤務が始まって3日が過ぎた。
モーニングの時間帯は意外にも客が多い。大学でこのカフェの名を聞いたことはなかったから、もっと人気のない店なのかと思いきや、壮年男性やOLに支持されているようだった。
朝が苦手だ、と言った藤木は本当に姿を見せず、交代の時間に起こしに行くのもユメの役割の一つになっていた。
午後8時――一旦、客足が落ち着いた頃、CLOSEの札を入り口に掛けた。
大学が1限目から始まるこの日は、どうしてもこれ以上は働けない。
通学は5分もかからない上、用意も朝に済んでいる。やろうと思えばあと30分は店を開けていられるのだが、何よりも藤木を起こすのに手間取ってしまう。
店主のくせに。ユメは唇を尖らせて、エプロンを脱いだ。
カフェの2階は住居仕様で部屋が3つある。
それで、住み込みだなんていうから、ユメは藤木と同居することを覚悟したのだが、藤木が住んでいたのはカフェの隣に建つ、古い賃貸住宅だった。ユメにとっては好都合なことではあるが、なんだか肩透かしにあったようで呆気にとられた。
藤木の部屋は、築30余年は経っていそうな老朽アパートの2階の一番奥にある。ユメは、三号室と書かれた扉のチャイムを鳴らしたが、いつも通り応答はなかったので、藤木から与えられている合鍵でドアを開けた。




