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足長おにいさん  作者: ふうりん
Episode.1
11/21

(11)

「ユメちゃん、君の仕事は……」


「おおおお断りします!」

ユメはふと我に返り、藤木から離れようと暴れた。しかし藤木はそれを許さない。

「駄目だよ。もう契約はしたからね。口約束でも、立派な契約さ」

藤木は淡々と言い、ユメの腕に力を込めた。少しの痛みが走り、ユメは眉をひそめる。


「それにどうして」


突然、藤木が立ち上がり、バランスを崩したユメはベッドに倒されて、その後を追うように藤木はユメに覆いかぶさった。


「いきなり辞めるだなんて言い出すのかな?」

「痛っ……」藤木に掴まれた両手首が軋む。


「ただ僕は君に、仕事をしてほしいだけなのに」


さっきまで氷のように冷たかった瞳に妖しさが宿った。せめてもの抵抗に、ユメは必死に藤木を睨む。

「仕事って……」

「だから、そんなに怒らないでよ。それとも、僕が怖いのかな?」

藤木は打って変わって、やけに楽しそうに笑う。そして、不意に顔を近づけてきた。思ってもみなかったことに、ユメは焦る。しかし藤木は一切の抵抗を許してくれない。ユメは涙目になりながら、目を強く閉じた。



「君の仕事は、モーニングのバイトだよ」

耳元で、藤木が囁いた。

「え」

意外な言葉に、ユメは目を見開いた。

散々脅すようなことをしておいて、何を言っているんだ、この男は。


藤木は心底可笑しそうに笑って、ユメの上から退く。呆然と仰向けになっているユメを見下げ、ひとしきり笑った後、藤木は説明した。

「僕、朝がすごく苦手でね。この店を引き継いで以来、モーニングなんてしてなかったんだけど。最近、常連さんたちから、喫茶店なんだからって文句言われちゃってね。困っていたんだ」

「……はあ」

「だから、君の仕事はここに住み込んで、大学に行く前にモーニングをすること」

「……はあ」


楽しそうに言う藤木を見てユメは項垂れた。じゃあ、さっきまでは何の余興だよ、と文句でも言ってやりたくなったが、やめた。どんなに嫌な奴でも、ただの学生を破格で雇ってくれるんだから、感謝しなくてはいけない。


ユメは、軽くため息をついて、起き上がろうとした。


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