(10)
先程は気が動転していて見えていなかったのだが、2階には部屋が二つあった。
ユメは、朝目覚めた部屋に目をやると、ドアが開いていた。それを見て、ユメは首を傾げる。
「さっき出て行ったとき、ドア、閉めたよね……」
藤木はそこにいるのだろうか、と足音を忍ばせて中を覗き込んだ。
「あ……寝てる」
ユメは可笑しげに呟いた。藤木は簡素なベッドに上半身を投げ出して眠っている。
もしかしたら、この人、私のせいで寝るところなかったのかな。
ユメは手近にあったパイプ椅子に静かに腰を掛けようとした。
すると、いきなり手を引っ張られ、バランスを崩してベッドに倒れこんだ。
「足長おじさんの寝込みを襲おうなんて、最近の子は積極的で困っちゃうな」
藤木の顔が、ユメの顔の真下にあった。
今にも当たってしまいそうなほどの距離で、藤木は意地悪そうに笑った。
「なっ……!?」
離れようと思っても、藤木に腕をしっかりと掴まれていて離れられない。
傍から見たら、これじゃ本当に……。そう思うと不覚にも顔が赤くなってしまう。
「そういえば、君の仕事を言っていなかったね」
藤木は目を細めて言った。藤木の言葉に縛られたように、ユメは動けなくなる。




