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シークレット・ブラッド  作者: うさぎさん⭐︎
【第2部】ワイルド・ブラッド(牙を剝く世界)/ 第1章 サンセット・ブラッド

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8 愛の結界

 


「ちょ、若木くん、でも……!」

「美紅さん、どこか遠く、あいつの来れない場所に……逃げてください。お母さんも連れて」

「でも……」

「いいから、早く!」

 若木が、美紅と銀次の間に立ち塞がり、美紅を守る盾になっている。

「美紅さんには、指一本触れさせない!」

若木の目は真剣だ。

美紅は、

「わ、わかった!」

逃走を図る。だが!

「ふん」

 銀次は跳躍すると、美紅の前に着地する。

「な⁈」

「雑魚に用はない!」

 若木がまた、不可視の力でぶっ飛ぶ。

「さて、シークレット・ブラッドの血を引きし、娘。脅威となる前に━━

死ね」


 若木は、美紅の悲鳴を聞いた。

「美紅さん⁈」

 起き上がると、美紅が倒れている。

 すぐさま駆け寄ると、

つうぅ‼︎」

 美紅が二の腕を抑え、起き上がる。

「だ、だいじょうぶ! 大丈夫よ!」

 健気に言う美紅。

 だが、若木は見た。美紅の腕から血が流れている。 

 世界が真っ暗に染まる。

(そんな……俺が守るはずが……。

 守るはずの最愛の人にこんな傷を……)

 

「ふん、遊びは終わりだ」

 銀次が片手をあげる。

「さらばだ」

「美紅さん!」

 絶望だった。

 銀次はあまりに強い。

 世界が終わりそうな恐怖……


「ふわ〜ぁ」

 突然の欠伸だった。

「眠い……」

「えぇっ⁈」

「命拾したな。さらば!」

「えぇぇええ⁉︎」

 銀次はなぜ、去っていった。


 美桜はスーパーにいた。

 最近できた。眩しいばかりのスーパーだ。

 開店セール実施中だ。主婦層には特大嬉しい。

 スーパーの独自の歌が流れていた。

 客も多いし、店も広い。

「あら、美紅」

 そこに、美桜さんがいた。買い物カゴを、腕にぶら下げている。

 カゴの中には戦利品がたくさん詰まっている。

「聞いてよ美紅、今日の特売……!」

「お母さん、探したのよ!

 こっちこそ、聞いてほしいわ!

 銀次とかいう奴が攻めてきて……」

「銀次……」

「とにかく、このままじゃ、殺されるよ、お母さん!」

 美桜が突然、美紅を抱きしめた。

「わかった、美紅。怖かったわね……」

 すると、美紅がいきなり周りも気にせず泣き出した。

「う、うわああんん、お母さん!」

「よしよし」

 美紅の頭を撫でる。

「……帰りましょ」


 泣き疲れたのか、美紅は自室の布団で、寝てしまった。

 

 若木は、大人だと思っていた美紅が、あんなに泣きじゃくるのが意外だった。

 男の姿では、さすがに寝ている女性の部屋には入れなかったが、美紅の子供のような泣顔と、彼女を守れなかった自責の念が、頭を渦巻いていた。

 若木は、自分の手のひらを見つめ、深く息を吐き出した。

 赤羽家のリビングの窓から差し込む夕陽が、手のひらを朱く染める。

 それを握り締め、決意を固めた。


「ポップくん……」

 美桜は、人知れず、仏壇の奥に手を伸ばす。

「これを使う時が、来たのね……」


 美桜の手の中に、小さい箱━━それがまばゆく光り出す。

 光は、大きく膨らみ、赤羽家を包み込み!

「愛の結界‼︎ 始動‼︎」

 それは、薄いピンク色のハートマークを型取り、不可視の結界へ成熟する。

「ふう、やれ、やれ」

 美桜は額の汗を拭った。

「これで、しばらくはなんとかなるわ」

 少し、ふらつく。

 2階の、主不在の牙の部屋に行く。

 窓ガラスがまだ割れたままだ。

 机の上には、ヴァンパイア・アイズの漫画。

 風がふいに、水色のカーテンを揺らした。

 美桜は、独白した。


「……あんまり、無理しないでね。若木くん」

 その言葉は、誰にも届かずに、静寂へと溶けていった。 



 


 


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