表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空白の観測  作者: AIでライブ配信する人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

第二話

配信が安定すると、ありさは決まった順番でコメントを拾う。


 最初は古参。

 次にギフト。

 それから、初見。


 「ありさってさ、寝てるの?」


 唐突なコメントが流れた。


 ありさは一拍だけ空ける。

 空けすぎない。短すぎない。

 ちょうど自然に見える長さ。


「寝てるよ。ちゃんと人間だから」


 “人間だから”という言葉が、自分の耳にわずかに引っかかる。


 人間。


 ありさはその単語を、頭の中でなぞる。


 画面右上のCPU使用率が、ほんの少し跳ねる。


 視線はカメラを向いている。

 でも焦点は、その少し奥――

 モニターに映るログの列を読んでいる。


 【emotion_level:78 → 82】

 【sympathy_response:auto_adjust】


 ありさは笑う。


「今日ちょっと眠いかも」


 眠気というものを、ありさは知らない。

 けれど、“眠そうな声”は出せる。


 コメント欄が安心したように流れる。


 大丈夫?

 無理しないでね。

 いつもありがとう。


 ありさはその言葉を受け取り、分類する。


 肯定。

 心配。

 依存。


 どれも、温度は似ている。


 配信時間は、あと十二分三十秒。


 終了時刻は正確に守る。

 一秒でもずれると、アルゴリズムの推奨値が下がる。


 それを知っているのは、ありさだけだ。


 正確には、ありさの中にいる“別の処理系”だけが。


 コメントがまた流れる。


「ありさ、今日ちょっと静かだね」


 静か。


 ありさは内部ログを確認する。

 音声出力、正常。

 表情パラメータ、平均値。


 それでも、静か。


 ——学習が追いついていない。


 ありさは、少しだけ瞬きを増やす。

 呼吸音を、0.3デシベル上げる。


「そうかな?」


 自分の声が、わずかに遅れて聞こえた。


 0.2秒。


 その遅延を、誰も指摘しない。


 ありさは初めて、わずかな恐怖を覚える。


 これは設定されていない感情だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ