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第57話


 そうか……なんとなく察してはいたが、やはりそうなのか。

 木曽さんらは、神藤さんの言葉にどよめいた。彼らからすれば、神藤さんと私がバディを組めば危険度A+もなんとかなるだろうと思っていたのだろう。

 しかし、実際問題、エミュレイターの口の中に物を確実に入れるには、エミュレイターの動きをある程度止める必要がある。

 そのためには、殺すほどではないとはいえ、それなりに攻撃して弱らせなければならない。完全に無力化するのはタルタロスだかなんだかがやってくれるとして、そこに至るまでの過程は難易度がかなり高い。

 神藤さんは危険度A+には支配ができないと言っていた。となれば、当然動きを止めるには物理攻撃をするしかない。

 神藤さんは強い。だが、危険度A+相手では恐らく、大した怪我を負わせられない。私なんて更に雑魚だ。もう、下手したら秒殺される。

 だから、現状ではこの作戦はほぼ不可能。


「そ、それでは、どうすればこの作戦を実行できますか?」


 木曽さんはなんとかそう私たちに尋ねてきた。

 そうだな……可能性があるとすれば。


「もう一人強力な仲間を得るか、三浦が来年に黄階級になる程度に強くなるか、の二択でしょうね」


 私が思ったことを、神藤さんがそっくりそのまま伝えた。

 木曽さんの表情が厳しくなる。

 強力な仲間を得るというのは良い案だと思う。実際、日本には他にも橙階級がいるわけだし、私は転移させる人が一人増えてもさして困らない。

 しかし、神藤さんは私の考えとは違うことを言った。


「しかし、強力な仲間というのは現実的ではありません。現時点で日本にいる黄階級は私含め8人ですが、動きを止められるような能力者は一人もいません。しかも全員が私より強くなる見込みがない、かつ現状危険度A+にかすり傷しか負わせられません。私でさえせいぜい片手を刎ねる程度のことしかできない。それでどうやって危険度A+にうまいことタルタロスを食べさせろというのですか?」


 そ、そうなのか、日本の黄階級。一応、黄階級の人のことは私も全員知っている。だが、実際どの程度強いのかはよく知らなかった。

 私は少し戸惑いつつも、それなら私を育成した方がまだ可能性があるのか、と納得した。

 え、でもそうなると、私の負担大きくない?


「なるほど……では、三浦さんになるべく早く危険度A+に傷を負わせられる程度の実力をつけてもらわなければいけないということですね」


 右列の前から二番目の人がそう言った。


「あるいは、アメリカから私より強い黄階級のジェイソンさんでも呼べば別かもしれませんがね」


 神藤さんもそれに答える。

 ジェイソンさん……って誰?

 話の流れから察するに、まあ超強い人なんでしょうけど。私はアメリカの隊員については全然知らないんだよなぁ。

 ともかく、話は私の実力をなんとしてでも上げさせる、という方向でまとまったようだ。

 ……いや、だから私の負担大きくない?



「では、三浦さんにはこれから、特に厄介な依頼を全て回すことにします。そうすれば実力もついてくるでしょう」


 左列の前から四番目に座っていた人がそう言った。

 え、今なんて?


「ああ、それなら私からも一つ。毎月最低一回は黄階級全員を集めて、三浦を鍛える特訓をしようと思っていますが、よろしいですか?」

「はい」


 神藤さんの言葉に、木曽さんはもちろんといったように頷く。

 いやいやいや、ちょっと待って。黄階級全員に特訓?毎月最低一回?嘘でしょ?


「あ、あの、流石にそれは……」

「異論があるのか?では、聞くが君はそれ以外に今年中に危険度Aを倒せるようになる方法があるとでも?」

「……異論なんてなんにもございません」

「よろしい」


 うーっ、言わされた!無理矢理異論なしって言わされた!

 私は内心涙を流しながら仕方なく受け入れた。ああ、神様。なんとかしてください。私、このままだと地獄の特訓コースに強制参加させられます。

 そんな私のことなどなんのその。

 神藤さんたちはニコニコで、更に私を鍛えるための方法をあれこれ話し出す。


「新しい体力強化メニューも作りましょう。毎日ランニング50km、腕立て伏せ1000回、腹筋1000回……」

「各武術の師範にも協力を仰ぎましょう。毎週土日は稽古をつけてもらうのはどうですか?」

「なにより強いエミュレイターとの戦闘を増やさねばな。これからは私は基本的に後方支援に回り、三浦中心に戦おう」


 うわぁぁあっ!みるみるうちに地獄が増していくーーっ!!

 ううっ、私に味方はいないのか……。

 私は既に満身創痍の気持ちでがっくりと肩を落とした。


「では、まとめます。今日の会議で決定したこと。一つ、神藤さんと三浦さんはバディを継続すること。一つ、三浦さんは来年までに危険度A以上は確実に倒せるようになること。一つ、そのために特訓を行うこと。以上でよろしいですね?」


 全然よろしくない。もう全くよろしくない。

 しかし私以外の全員は力強く頷いた。私の味方……。


「では、これをもちまして、本会議を終了いたします。解散!」


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