表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/74

第47話

 呆然と互いに顔を見合わせる。

 深夜くんは今日は私服だ。白のトレーナーに黒のダボッとしたズボン。今時の男子中学生という感じで、なんというか、遠い人のようだ。


「どうしたの、こんなところで」

「茜に誘われて」

「あ、そうなんだ……」


 深夜くんは少し怪訝な表情を浮かべる。

 そうか。深夜くんは私が茜と仲良くなったことを知らないんだ。そりゃあ、こんな反応になるに決まっている。


「その、色々あってね。よく話すようになったの」

「へえ……」


 な、なんか、心なしか深夜くんの顔が怖くなったような?一体どうしたんだろう。

 疑問に思いつつ、私は無理矢理話を変えた。


「それより、深夜くんはどうしてここへ?」

「友達と遊ぶことになって」

「そっか。楽しそうだね」

「いや、まあ、うん……」


 どうしたんだろう。妙に歯切れが悪いが。

 ……と、そのとき、ドアの向こうから更に人影が現れた。


「どうしたんだよ蓮……って、その子、三浦史詩夏じゃん!うわー、きれーー!本物だー!!」

「えっ、あ、どうも」


 突如現れた騒がしい存在に、私は思わず固まる。

 な、なんで私のことを知っているんだろうか。私、なにか目立つことしたっけ。

 挙動不審に返事すると、見かねたように深夜くんが私と彼の間に立ち塞がった。


「おい、変な態度とるなよ」

「お、おお……ごめん。蓮、そんなキャラだっけ?」

「別にいいだろ。史詩夏、ごめん。うるさくして」

「いや、全然いいけど……」


 だが、彼の言葉を機に、扉の向こうから他の人たちもぞろぞろと顔を出してきた。

 その中には当然女の子もいて、私は少しショックを受ける。分かってはいたけど、やっぱり深夜くんは私とは違う世界の人なんだな……もしかしたら彼女とかもいるのかもしれない。全くそういう話は聞かないが。


「えー!本物の三浦史詩夏!?すごー!」

「もしかして、蓮の知りあい?」

「顔ちっちゃー!足長!目大きい~かわいすぎる~」

「有名人とこんなところで会うなんて!マジびっくり!」


 次から次へとかけられる言葉に、私は完全に狼狽えて、あわあわと口を動かすことしかできない。

 そんな私を見て、深夜くんは慌てて全員を部屋へと押し込んだ。


「史詩夏が困ってるだろ!皆、早く部屋に戻れって!」


 しかし、彼らはなかなか引っ込む気配がない。


「えーっ、史詩夏呼びとかめっちゃ仲良いじゃん!もしかして、そういう関係だったり?」

「い、いや、そういうわけじゃないけど」


 なぜか顔を赤くする深夜くん。

 ……もしかして、私と恋人同士だと思われるのがとんでもなく嫌、とか?間違いでもそう思われたくなくて、恥ずかしがっているのかも。大変だ。私のせいで、深夜くんに迷惑がかかっている!


「私と深夜くんはただの知りあいです!」


 私がそう断言すると、彼女たちは「えー、つまんなーい」と言いながらも大人しくなった。

 やったよ、深夜くん!一仕事終えたような気持ちで深夜くんを見ると、何故か深夜くんは深い影を背負った顔になっていた。何故だ。


「そ、そうだよね……俺は史詩夏の知りあい……知りあいかぁ……」

「え、もしかして、知りあいですらない……?」

「いやいや、知りあいではあるよ!そこは疑う余地ないから!」


 落ち込みかけた私に、深夜くんは勢いよくそう言った。

 良かった。距離感を勘違いしていたわけではなかったようだ。私はホッとして笑みを浮かべる。

 そんな私たちを、深夜くんの友達はなにやらニヤニヤと見つめていた。ど、どうしたんだろうか……。


「まあ、なんとなくは分かったわ」

「俺は応援してるから!」


 何故か深夜くんを励ます彼ら。一体どういう話の流れなのかさっぱり分からない。一方の深夜くんはといえば、やめろよ、とまた頬を染めて怒っている。


「とにかく、うるさくしてごめん」

「全然。でも、会えて嬉しかったよ」

「……俺も」


 深夜くんは不意に、甘い笑顔で私を見つめた。まるで愛しいものを見るかのようなその目に、私は一瞬フリーズする。

 な、なんか、勘違いしそうになるな。おお落ち着け私、余計なことは考えちゃ駄目だ。きっと気のせいに決まってる。


「じゃ、じゃあ、またね」


 私はドギマギしながら深夜くんに別れを告げた。


「うん……また」


 後ろを向いていた私は、深夜くんがどんな表情をしていたかなんて、知らない。

 それから無事ドリンクバーを見つけてドリンクを注ぎ終え、戻った頃には、深夜くんたちは個室に戻っていた。

 私は「お待たせ」と部屋に戻る。


「ちょっと、いくらなんでも見つけるのに手間取りすぎでしょ!何回か私も下に行こうか迷ったわ!」


 茜はぷんすか怒って私を見た。


「ごめん……!ちょっと、そこで深夜くんと会って」

「えっ、深夜と?」


 私がそう言った途端、彼女はすっと怒りを静める。代わりに、驚いたように目を見開いた。


「うん。なんか、友達と来てたみたい」

「へ、へぇー。それで、深夜は何か言った?」

「いや、特にはなにも。会えて良かったねって」

「何もないなら、別に良いけど……」


 茜はどこか含みを持たせた言い方だった。私はその態度を不思議に思う。どうしたんだろう。茜は深夜くんとはさして仲が悪くなかったと思うが。

 しかし、茜は私が疑問を抱いているのに気づいたのか、焦ったように話題を変えた。


「それより、コーラもらってもいい?」

「ああ、うん」

「わざわざありがとね」

「いや、全然」


 あっ、トイレ行くの忘れてた。

 まあいいや。尿意も深夜くんと会ってどこかへ行ってしまったし。私は気にせず持ってきたピーチジュースを飲む。美味しい。

 実は私の大好物が桃である。そのため、桃関連の食べ物を見るとついついそれを選んでしまう。


「でも、フリータイムにしといて良かった。結構時間経っちゃってたから」

「ほ、本当にごめん」

「いやいや、気にしなくて良いから。それより、歌おう!ほら、曲選んで!」


 茜はずいっと私に機械を差し出してきた。私は素直にそれを受け取る。

 その後、茜と私はたっぷり歌い通して、お昼になったのでカラオケを出た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ