第44話
私は即座に転移して神藤さんの後ろへ回る。その瞬間神藤さんは目に見えないほどの速さで振り向いて、私に足蹴りを浴びせた。
速すぎる……!前の危険度Aより速い。
咄嗟に避けたが避けきれず、右脇腹に鈍い痛みが走った。
しかし体勢は整えたまま、素早く後ろへ回り込み殴ろうとして……手を掴まれてくるりと背負い投げられた。
どん、と背中に衝撃が走る。だがすぐ起き上がって次から次へとやってくる攻撃をなんとか受け止める。
痛い、だがまだできる。
完全には躱しきれないが、一つ一つの攻撃を集中して見切る。強化をかけていれば、一応対応することはできる。もちろん直撃を免れるというだけで、ちょこちょこかなり痛い攻撃を受けるが。
「君はなかなか速いな」
「手加減されているからなんとかなってるだけですよ」
私はそう答えつつ首のすぐ横に迫っていた攻撃を避ける。
ただ、押されているせいであまり攻撃できていない。攻撃を止めるには攻撃を。そう思いつつ、攻撃する隙がないのが悔しい。
「しかしまあ、思ったほどではないな。もう少し期待していたんだが。病み上がりなのが関係しているのか?」
「別にそういう訳ではないですが」
むむ、ちょっとイラッとくるな。
私は更に感覚を研ぎ澄まして思考を張り巡らせた。
予想外を産むのはどうだろうか。そして隙をついて足を拘束する。
私は周囲のものをさりげなく観察した。そうだな、あれがいい。
「転移」
私が呟くと、切られた木が根元ごと神藤さんに落ちた。
至近距離過ぎてさすがの神藤さんも躱しきれず、下敷きになる。だがすぐ木を木っ端微塵にして這い出たのは流石といえるだろう。
私はその隙に彼のすぐ横へ移動して思い切り横腹を蹴った。
僅かにかすったその攻撃。しかし、呆気なく躱されてまた攻撃される。
今度は砂を神藤さんの周りに転移させる。神藤さんは瞬時に移動し逃げたが、私はすかさず逃げるであろうと予想した位置へ行き攻撃を浴びせた。
もちろんこれも避けられるが、そこは想定内。避けた場所にはアイスピックをあらかじめ刺してあった。
すんでのところでそれに気づいたらしい神藤さんは、素早く身を翻すが私はその隙に彼に蹴り、殴り、頭突きの三段階攻撃を繰り出す。
今度は蹴りがヒットした。ただ、確かに感触はあったのだが、神藤さんは全く狼狽える様子がない。私の足蹴りではイマイチ力が足りないのかもしれない。それであれば攻撃は厳しい。
私は迷った末、剣を取り出して攻撃した。
「君のサブ武器は剣だったな。だが、それは私のメイン武器だ」
瞬時に剣で応戦させる。しかも剣筋が見えないほど速い。上手すぎる。
私はほとんど直感を頼りに攻撃に応対していた。速すぎるので思考の余地もない。とにかく剣を受けて受けて受け続ける。その度に力を受け流すが、何度かは受け流しきれず腕に痛みが蓄積する。
「なんでこんなに、速いんですか……!」
「訓練の賜物だな。だが、君もよく耐えている。剣の扱いはそれなりのようだが、攻撃への返しは悪くない」
「ほぼ直感ですけどねっ」
「直感でそれならば大したものだ。君はかなり良い筋をしている」
私は褒められてちょっと嬉しくなった。だが、調子に乗る暇はなく、攻撃はひたすらに続く。
これではらちがあかないと思ったので、再び砂塵を周囲に散らした。
神藤さんと私に距離ができたので、今度はメイン武器を手に取る。
すかさず引き金を引いた。
「機関銃というのは、なかなか良い趣味だ」
神藤さんは余裕たっぷりにそう言った。
瞬時に弾道を予測し避ける神藤さん。私はそんな彼を追いかけてひたすら弾丸の雨を降らせる。
しかしすぐに神藤さんと私の距離が縮まった。見事に弾丸を避けながらこちらへ近づいてきた彼は、そのまま私の背後を奪おうとする。
だがそうはさせない。
「転移」
間髪入れず転移し、私が彼の背後に回って今度は剣を振るう。
その剣は神藤さんの髪を数ミリ切った後、神藤さんの剣によって受け流された。
「今の攻撃はそれなりに良かったな。それに、私の剣を受けて剣を手放さないのは大したものだ。攻撃方法は相変わらず杜撰だが」
「ず、杜撰……」
「君は頭を使ってなさすぎる」
そう言って、神藤さんは一瞬動きを止める。
私は困惑しつつ、その隙を逃さず攻撃を繰り出した。
それはしかし、神藤さんには当たらず、宙を空ぶっただけだった。
その後も剣や銃、体術での戦闘が続く。かなり戦ったはずだが、神藤さんは微かな疲労さえ見せない。私はそろそろ腕がきつくなってきたのに。
「そろそろ終わりにしませんか?」
「そうだな。まあ良いだろう」
神藤さんは途端に一切の攻撃をやめた。
私ははぁ、はぁ、と肩で息をしながら彼を見上げる。
それにしても、手加減されていて本当に良かった……しかも神藤さんは支配の能力や錯乱の能力は一切使っていなかったし。
私は転移も強化も使ってなんとか対抗できる程度だった。実力差が大きいのは分かっていたが、やはりひどい。
「それで、私への評価は?」
「悪くない。稽古をつけてやってもいい」
「でも、神藤さんは東京の戦闘隊員ですよね?私の稽古をつける時間はあるんですか?」
神藤さんは、私の言葉にああ、と軽く答えた。
「伝え忘れていたが、君は今日から私のバディだ。私と一緒に全国を回り、敵を倒してもらう」




