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第40話

*****





 戦績表というものがある。新年になると順次隊員に送られるもので、去年一年間で討伐したエミュレイターの数や種類、報酬、評価などが載っている紙だ。

 帰ってきたら、それが届いていた……ので、開けてみようと思う。

 暗い室内に電気を灯して、暖房をつけながらソファに座る。

 封筒を開けて紙を引っ張り出した。

 まず最初に目に写ったのは、膨大な数の討伐数。

 総討伐数は5432体。

 報酬は総額7426万4000円と基本給の720万円で合計8146万4000円。そこからEESになんやかんやで取られるお金を引くと、6500万円ほどが残る。

 一昨年はここまで多くなかった。ざっと1000体ほどだった記憶がある。それが、去年は5000体。5倍もの量を倒していたのだと考えると、普通に恐怖である。

 報酬も一昨年とは比べものにならないほど多い。そして、引かれる量も一昨年より尋常じゃないくらい増えている。嘘でしょ、1500万近く引かれてるの。

 私はがっくりとうなだれてため息をついた。貯蓄一億へはまだ届きそうにない。

 討伐数の内訳を見てみると、一番多いのは危険度Fで2469体。次が危険度Eで1223体。そこから徐々に少なくなっていき、危険度Aに至ってはたったの2体しか倒していない。

 まあ、正確には、危険度A+との戦闘も含めれば、討伐数は3体になるのだが。とはいえ、危険度Aは私にとって倒すのが難しい敵である。むしろ2体は倒せたことが凄いと思う。

 この戦績によって、階級も上がったに違いない。階級に関してはわりとシビアで、どれだけ沢山倒したかが問題ではない。大事なのはどれほど危険な敵を一度に倒せたかだ。

 ここで一応各階級の強さを紹介しておくと、ざっとこんな感じだ。


黒階級(B階級):一番初めの階級。特に強さに基準はない。

藍階級(I階級):危険度E2体を討伐できる。

茶階級(D階級):危険度D1体を討伐できる。

紫階級(P階級):危険度C1体を討伐できる。

青階級(S階級):危険度C3体を討伐できる。

赤階級(R階級):危険度B1体を討伐できる。

緑階級(G階級):危険度B+2体を討伐できる。

橙階級(O階級):危険度A-1体を討伐できる。

黄階級(Y階級):危険度A1体を討伐でき、危険度A+にもかすり傷くらいなら与えられる。

白階級(W階級):危険度A+1体を討伐でき、測定不能にもかすり傷くらいなら与えられる。


 黒が一番下の階級で、白が一番上。白階級は他の階級とは比べものにならないほど強くて、そこまで行くと世界中を股にかけてエミュレイターを倒していたりする。

 私の階級は白の二つ下。日本では歴代最年少の橙階級だ。

 振り返ると、隊員になってから色々なことがあった。隊員になって初めの年は、自分がどこまで行けるかという気持ちで強い敵とばんばん戦った。おかげで実力を知ることができた。当時は危険度B-程度が限界だった記憶がある。

 それから、次の年は慣れてきて、無理しない程度に任務をこなしていた。中学三年生で受験もあったから、私には大して重要じゃないと分かってはいたものの、それなりに学業に集中していた。限界は危険度B+ほど。

 そして去年。受験も終わり、実力も上げていって、ようやく危険度A-を倒せるまでに成長した。実のところ、危険度Bクラスと危険度Aクラスでは大きな差がある。

 危険度B+と危険度A-は階級的には一つ違うだけだが、危険度の差は比べものにならない。まあ、それを言ったら危険度Cから危険度B-もかなり差があるのだが、危険度B+と危険度A-は更にその上を行く差だ。

 危険度A-からは超人でも才能がなければ決して討伐できないレベルになる。危険度B+までは努力すれば登れる高みではあるが、危険度Aクラスは普通に超人の中でも才能も経験もないと倒せないほどである。

 とまあ、そんなことを言っていると私が凄いみたいに聞こえるかもしれないが、実のところ、私はそこまで凄くない。

 どちらかといえば、この超能力が凄いのだ。二能力持ちというのは超人の中でもレア中のレアだし、エミュレイターセンサーを保っていて二能力持ちとなると世界でもそれほど多くない。

 しかも能力が転移と強化という汎用性の高い力ときた。私の能力とセンサーのことを聞いた私の訓練生時代の教官は、「あんた、恵まれすぎだね。そんなに恵まれてたら私でも白になれそうだ」と言っていたほどである。

 というわけで、私は自分の実力以上に評価されている部分が大きいのである。

 恵まれているという自覚はあるが、だからこそ努力してより高みを目指したいという気持ちでここまでやってきた。その成果はちゃんと戦績に出ていると思う。

 だが、正直言って、まだ足りない。


「教官が白になれるっていうなら、私もきっと白になれるはず……」


 私はごろんと寝転がってそう呟いた。

 暖房が効いてきた室内は、眠るのには丁度良い温度だ。しかしまだご飯を食べていないので、なんとか起きようと目を擦る。

 戦績の欄は一度置いておき、評価の欄を見ると、こんなことが書かれていた。


『総合評価AA

評価について

体術、身のこなしはまだ改善点あり。超能力を上手く使っているが、頭の良い戦い方かといわれるとやや疑問。さらに上を目指せる。今後に期待。瞬発力は充分、勘も鋭く、危機回避能力は高い傾向。冷静な判断力は熟練の戦闘隊員にも引けを取らないレベル。また共同任務ではチームワークも優れていると考えられるような戦い方をしていたが、一方で仲間を頼らない部分もあり、信頼関係の構築は不十分。今後も単独任務を任せる予定。』


 うっ、ぐさぐさ刺さってくるな……。これ誰が書いたんだろう。私もよく実感しているところをピンポイントでついてきている。

 体術は、私ももっと良くしたいと思っている部分だ。戦闘隊員は大抵空手や柔道の有段者だが、私は今のところ剣道三段というくらいしかない。普通にもうちょっと強くなりたいところである。

 また訓練場に行くか……茜とも仲良くなったことだし。

 そんなことを考えながら、一番下まで見やる。そこには、都道府県別、全国における、エミュレイター討伐数、危険度別討伐数、評価点での自分のランキングが載っている。

 えーっと、私は……北海道では、討伐数では全部1位だな。評価点は2位だ。1位は……多分新井さんかな。

 全国では、前回は確か討伐数が89位、危険度別討伐数では一番高くて危険度Bクラスで41位。

 今回は……え、討伐数1位?嘘でしょ?そんな急に上がることある?

 ぎぎぎ、と目線を動かして、今度は危険度別の討伐数を見る。

 危険度F5位。危険度E3位。危険度D1位。危険度C1位。危険度Bクラス5位。危険度Aクラス14位……。

 な、なるほど。まあ、北海道での一人当たり任務量は相当多かったしな……と、とりあえず納得する。

 評価点は56位。前回は確か358位だったので、かなり上がった。

 紙を一通り見終えて、はぁぁーっと疲れを感じて目を閉じる。ああ、眠い。ご飯食べなきゃいけないのに……なんか……疲れた……。





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