六回目転生!見たくないよ現実!
初投稿だけど内容が重めになっちゃっタ…
皆は、前世って信じるだろうか?俺は信じない。どんな生物だって、物語のように始まりと終わりがある。始まりが誕生で終わりが死だ。前世なんてあったら、終わりなんて来ないじゃないか。始まり、終わると思ったらまた始まって今度こそーって、また始まる。やってられないよな?だから前世なんて信じてないんだ。前世なんて本来、必要ないものなんだ。俺みたいに覚えてしまってる奴は、尚の事──────────────
───────────────
───────────
「起きろよノヴァ!」
「…ォ"エッ!」
溝の匂いと卵が腐った匂い、生ぬるい温かさを帯びたガス臭い風が頬を撫で、えずきながら目を覚ます。どうやらまだ死んで居なかったらしい。ジンジンとするほっぺと枝のような自分の腕を見て錯乱したい気分になった。仕方無く瞼を上げて声の聞こえる方向を見ると同じように骨と皮しかないガキがこっちを見ている。こいつ誰だっけ?てかおれ誰だ?
ぼやぼやとしてる俺に髪の色と目の色だけは綺麗な色をしたほぼ骨のガキが呆れた顔をした。
「だからくらいが高そうなあの貴族だけはやめとけって言ったんだよ!最近盗みが上手くいってたからって調子乗りすぎだったんだ!」
「う"…だれだおまえ?」
「は?!また忘れたのかよ!怪我したお前にこんなことしたくないんだけどさ、まあお前が言ったんだし自分を恨めよなー」
「え?…なにが、ブッふぁ?!」
強烈なビンタをお見舞されてやっと思い出した。
「あっ…?!リンだ!」
そうだこいつはリン。今回のおれの身内だ、のばず。ヒリヒリとした頬が自信を無くさせる。まあ、身内と言っても、産まれてから一緒に生きてきただけでこの体の血が繋がってるかどうかは知らんがな。
記憶を飛ばしがちなおれにビンタして思い出させてくれたんだ。
そう、どうやら何かやらかしてしまったであろうおれは、漸く気絶していたせいで思い出してしまった。
俺はもう初めて転生してから400年は生きている─厳密には転生し続けている。今回は6回目の転生だ!
神から始まって、久しぶりの人間じゃん!!
そう、恐らく久しぶりの人間過ぎて物事を上手く認識できてなかった、自我の発現が遅れたのだ。
(おいおい!人の形してるだけで興奮してきたな!)
俺は内心わくわくしながら身体を動かそうと思ったが、腹部と右目に鋭い痛みが走り一気に覚めた。どうやら右目はあるが、かなり腫れている。
「どうした?右眼が痛むか…?」
俺より背が高いリンは俺の頭を優しく撫でた。明かりがないこの空間にわざわざ逃げ込んだのは俺目が良いからだろう。
俺はリンを見上げると、少し状況が見えてきた。リンと俺の服装はボロボロでかなり汚れている。リンの胸にはあまりにも毛色が違うネックレス。そして何があったのか知らないが左目が既にない。それを隠すこともなく義眼をつけることもしてないせいか、かなりおぞましい見た目をしている。もう片方の目が綺麗な目をしているから、きっと元の顔は美形だったのだろうと思う。どうしても今までの事は朧気で思い出せないけど。
こんなリンの様子と、盗みをやってかないと生きてけない感じを見るに──孤児だ。
こんな境遇の人間は、野垂れ死ぬのがオチだ。
「…はあ、俺また犬になるターンなのかな」
「…起きてすぐそれだよ、毎度毎度、ノヴァの夢見が悪いのはもうわかってるけどね。ノヴァは人間だよ、まだ。そしてもうすぐお互いそうじゃなくなるかもな!悲しんで聞け、お前指名手配されてるぞ!」
「え!?俺ってば何をやったんですかい?」
「なんだその口調…お前がやったことなんて、多すぎて語れねえけど、今俺らを騒がせてんのは、お前が盗みに襲った貴族がお忍びで街に来てたお姫様ってことかな!そしてお前は普通に護衛の騎士に返り討ち!俺らはいま下水道に行って隠れたけど、お前が下水に落ちて沢山ここの水飲んで気絶してたんだ!」
「まじで説明ありがとう!でも最後のは言わないで良かったよ!」
俺は喉奥に口を突っ込み吐きだそう試みながら思考を巡らせた。この国はどこだ?暫く人間じゃなかったから知能の低下を感じる。前犬だった時はめっちゃ喉かなとこだったから、今度もそこがいいと思ったけど、リンと俺の孤児っぷりを見るに、かなり貧富の差が激しい発展途上国か、戦時下の二択と言った所か。てかなんつった!?お姫様に手出した!?
「そ、そんな…!じゃあ終わりじゃねえか……!!」
「言ってる場合か!王に見つかったら俺ら二人とも喰われるぞ!」
「喰われる?なにに?」
「ッ、だから早く逃げ…」
リンが言い淀むと、水の流れだけが聞こえていた、地下の空間にうっすらと金属同士が擦れたような音がする。
「この音…」
「…まずいぞノヴァ、騎士たちだ」
「つ、捕まったらどうなる?」
こんな話をしている間も、音は強くなっている。暗すぎるこの場所じゃお互いの顔も目が慣れて凄く近くにいてわかるぐらいだ。それだから嫌でも当たりが明るくなるのを感じる。誰かが火を持って近づいてきてるのだ。
未だに現実を見れてない俺を震えながら可笑しそうに笑ったリンは小さく息を吸って吐き出した。リンの輪郭が光に照らされた。
騎士団が来たのだ。
リンは俺の肩を信じられないほど弱い力で握ると、泣きそうな顔で見つめあっていた視線をずらした。
「…ッ悪神に喰われるぞ!!!」
リンは大きな声で飛び出した拍子に胸のネックレスを真紅に光らせた。そして素早く騎士に、口から炎を吹き出した。
「逃げろ!!ノヴァ!」
細い枝に押された俺は水の中に足を滑らせる。騎士団は人数が多いのか、落ちた俺を追いかけて既に水に入ってるやつもいる。
ちょっと待ってくれ、リン!お前は口から炎が出せたのか?
「クソッ!このガキが盗人の継承者モドキだ!殺せ!」
「おとなしく捕まれ!汚らしい人間が!」
「離せッ!、カハッ…」
剣に刺されたリンが血まみれになりながら火を吐く。それはまるで火の海ができ上がる勢いで。どうやらリンが持っている
───継承者?
リンの首元には赤くキラキラと光る宝石の首飾りが着いている。どうやらその事を言っているみたいだ。
(そうだ…だから今、孤児俺らは、この生活に耐えられなくなって、目を付けてた貴族がその遺物を持ってるって聞いて…盗んたんだ!アホすぎるだろ!)
「待て!殺すな!!勅命だぞ」
「…ふっ、カハッ、私は遺物を持ってるんだぞ!」
リンはボタボタと血を流しながら腹部に刺された剣を細い手で触る。元々骨と皮しかない身体から少し血が抜ければ、すぐ死ぬに決まってる。
「リン!!!!」
リンは剣の方向に自ら歩き続け、身体に深く差し進めていく。殺せない騎士は、後ずさり、その隙にリンは騎士にキスするように炎を吐き出し騎士を殺した。
「団長ッーー!!」
仲間を殺された騎士は次々に俺を無視しリンの方に剣をかがげる。リンはその隙に全ての騎士を焼き付くした。騎士たちの焼ける音。そして意識だけある騎士達の呻き声。
そして後ろにいる動かないノヴァを騎士の肩越しに睨んだ。
騎士の持ち物に引火したせいで、あたりはかなり明るく照らされている。
「逃げろって……!」
絞り出すように叫ぶリンを横目に、俺は衝撃で動けないでいた。なんで思い出せなかったんだろう。なんでもっと早く気づかなかったんだろう。
リンは金色の髪と金色の目をしていた。兜を被った騎士団も、隙間から見える髪が同じような髪色をしている。
そして自身も水面に照らされる。
老婆のように白い髪、金色の瞳。
凄く前に見覚えがある。何か違うのは少しの顔立ちと、背格好だ。
(おいおい……まさか、まさか)
「うおおおお!!」
「…ノヴァ!!」
後ろから隠れていた騎士が剣を掲げてつき刺そうとする。
姫を傷つけた、小汚い人間の俺を、酷い目つきで睨みつける騎士。
その目線には覚えがある。
「死ねええええ!!!お前らはッー!」
見上げる。懐かしい色だ。この国の人しかこの色は生まれない。金色ではなく黄金の目────
「悪神エリンの元に送ってやる!!!」
騎士が咆哮を上げ、足止めに俺の腕を切り落とそうとする。その咆哮がグルグルと下水道に反射して、酷く長く聞こえる。騎士の胸の王家の紋章が、リンが出した炎によって光る。
そう、この国は神興国クルエド。
神の興した国。
そして俺は、6回目の転生を経て、戻ってきてしまったらしい。
自分の興した国に。
そして俺は最悪な事に、悪神エリンその人である。
「嫌だあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
また戻ってきてしまったのだ。
もう二度と現れないと約束したのに─────────
俺は騎士の剣に自ら身体を突き刺した。




