表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第8話「選ばれし境界」


夜。


金輝島に設置された臨時居住区は、

人工照明の白い光に包まれていた。


だが、瑛斗の部屋だけが――

わずかに、暗かった。


「……眠れない」


ベッドに横になっても、

目を閉じるたび、二つの空が浮かぶ。


青い空。

魔力の流れる空。


重なり合って、軋んで、

どちらにも完全には属さない感覚。


「境界……か」


昼間、ルルに言われた言葉が、

胸の奥で何度も反響する。


そのとき。


――カチリ。


室内灯が、勝手に消えた。


「停電……?」


違う。


闇の中で、

光が、内側から滲み出していた。


「……なに、これ」


自分の手が、淡く光っている。


金でも、白でもない。

混ざった色。


触れようとした瞬間――


視界が、反転した。



瑛斗は、空中に立っていた。


否。

“立っている感覚”だけがある。


足元には、地球。

頭上には、ドラード。


二つの世界が、

上下に重なって見える。


「……夢?」


「夢じゃないよ」


背後から、声。


振り向くと、

ルルが、静かに浮かんでいた。


「ここは、

境界の内側」


「内側……?」


「あなたの中」


瑛斗は、息を呑んだ。


(俺の……中?)



「世界が、あなたを通って、

行き来してる」


ルルは、瑛斗の胸に手を当てる。


その瞬間、

大量の情報が流れ込んできた。


・精霊の囁き

・魔力の奔流

・科学の法則

・重力、電磁波、時間


「――ぐっ……!」


膝をつく瑛斗。


頭が、割れそうだった。


「むり、むりだろ……

こんなの……」


ルルは、少し悲しそうな顔をした。


「だから、

世界は“ひと”を選ぶ」


「ひとりで、抱えさせるため?」


「ちがう」


ルルは、首を振る。


「つなぐため」



現実世界。


瑛斗の部屋の外。


警報が鳴り響いていた。


「エネルギー異常反応!

居住区B-12!」


ミルスが、端末を見つめて叫ぶ。


「……これは……」


ラークが、拳を握る。


「瑛斗だ」


扉を開けようとするが、

見えない壁に弾かれる。


「近づくな」


どこからともなく、声が響いた。


空気が、燃えるように揺れる。


「……サラマンダー」


ミルスが呟いた。


炎の揺らぎの中に、

赤き精霊神の影が見えた。


「まだ、時ではない」


低く、威厳ある声。


「境界が、安定しておらぬ」


「だが!」


ラークが叫ぶ。


「彼は、人間だ!」


「だからこそだ」


サラマンダーは言う。


「人は、壊れやすい」



境界空間。


瑛斗は、必死に息を整えていた。


「……なあ、ルル」


「なに?」


「俺が、これを引き受けたら……

どうなる?」


ルルは、少し考えてから言った。


「世界は、こわれない」


「じゃあ、俺は?」


一瞬の沈黙。


「……変わる」


その答えで、十分だった。


瑛斗は、立ち上がった。


震える足で、

それでも、前を向く。


「逃げたら、

誰かが代わりに壊れるんだろ」


「うん」


「それなら――」


瑛斗は、胸に手を当てた。


「俺が、

境界になる」


その瞬間。


二つの世界が、

一斉に震えた。


金色の光が、

瑛斗の身体を貫く。



現実。


警報が、止まった。


扉の前に、

瑛斗が立っていた。


顔色は青白い。

だが、目は――


「瑛斗!」


皐月が駆け寄る。


瑛斗は、微笑んだ。


「……大丈夫」


その背後で。


誰にも気づかれぬまま、

影が、一つ蠢いた。


「……見つけたぞ」


デーモンロード・ダーク。


境界の誕生は、

彼の覚醒を――

確実なものにしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ