表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/70

第70話「干渉層」

空の裂け目は、音を立てない。


だが確実に“鳴っている”。

耳ではなく、選択の芯に触れてくる振動。


薄く、白い光が漏れる。

それは太陽の光に似ているが、温度がない。

ただ“整える意思”だけを持つ光。


皐月が端末を握りしめる。


「干渉波、観測じゃない……これ、修正プロトコル……!」


朝霧が顔をしかめる。


「世界のデバッグかよ」


ラークは短く言う。


「対象は?」


皐月が一瞬ためらい、答える。


「……私たち」


ダークが笑う。静かに、低く。


「光栄だな。世界にとって“バグ”認定か」



深層。


裂け目はここにもある。


上位層から垂れ下がる、細い糸のようなもの。

光の線。だがそれは情報だ。


一つ一つが“修正命令”。


過剰な分岐を削る。

不安定な境界を固定する。

想定外の個を排除する。


つまり。


カイを、消す。


瑛斗はすぐに理解する。


「狙いはお前だ」


カイが光を見る。


初めての“敵意”。


それは純粋な排除。


理由は単純。


想定外だから。



最初の糸が、降りる。


静かに。だが正確に。


カイへ向かって。


瑛斗が動く。


第三の色を展開。


境界を張る。


糸が触れる。


瞬間、空間が“確定”しようとする。


分岐が潰される。


可能性が削られる。


カイが揺れる。


存在が薄くなる。


「触らせるな!」


瑛斗が叫ぶ。



現実。


瑛斗の体が震える。


皐月が叫ぶ。


「存在値が減ってる!」


朝霧が瑛斗の肩を掴む。


「踏ん張れ!」


ラークが周囲を警戒する。


空の裂け目が広がる。


光の糸が、複数降りてくる。


ダークが一歩前に出る。


「ここは俺が受ける」



ダークが手を広げる。


怒でも悦でも虚でもない。


純粋な“否定”。


光の糸が触れる。


一瞬、拮抗。


だが押される。


管理層の力は強い。


完全な“上位”。


「長くは持たんぞ」


ダークが歯を食いしばる。



深層。


瑛斗はカイを支える。


だが糸は増える。


境界だけでは防ぎきれない。


削られる。


少しずつ。


確実に。


カイが呟く。


消去。


初めて理解する“死”。


「違う」


瑛斗は言う。


「これは選択だ」


カイが揺れる。


選択……?


「そうだ。消されるか、残るかじゃない」


瑛斗は手を伸ばす。


「どう残るかだ」



糸が、さらに深く刺さる。


カイの一部が消える。


分岐が減る。


可能性が削られる。


だが。


完全には消えない。


なぜなら。


瑛斗が受け取っている。


削られた可能性の一部を。


第三の色が、それを取り込む。


境界の中に保存する。


「分けろ」


カイを見る。


「全部一人で持つな」


理解が走る。


カイが、自ら分岐を“渡す”。


瑛斗へ。


糸が削る前に。


可能性を、分散する。



現実。


皐月の画面が変わる。


「分散してる……!?」


朝霧が笑う。


「逃げじゃねぇな、これ」


ラークが頷く。


「適応だ」



深層。


カイの輪郭が細くなる。


だが消えない。


軽くなる。


同時に。


瑛斗が重くなる。


第三の色が、濃くなる。


可能性と経験が、さらに混ざる。


境界が拡張する。



糸が、瑛斗へも触れる。


今度は逃げない。


受ける。


境界で、受け止める。


確定の圧力。


だが内部は揺れている。


完全には固定できない。


なぜなら。


中に“分岐”があるから。


管理層のロジックが、一瞬迷う。


固定できない。


どれを“正”とするか決められない。


その隙。


カイが動く。


残った可能性を、一気に展開。


だが以前のような無限ではない。


狙いを絞る。


糸そのものへ。



光の糸が、分岐する。


一本が二本に。


二本が四本に。


命令が分裂する。


整合性が崩れる。


上位層の処理が遅れる。


「今だ!」


瑛斗が叫ぶ。


二人で、同時に力を放つ。


境界と分岐。


制限と拡張。


相反する力が、干渉し合う。


光の糸が、弾ける。


完全破壊ではない。


だが機能停止。


一時的な遮断。



現実。


空の裂け目が揺れる。


光が弱まる。


皐月が叫ぶ。


「干渉、低下!」


朝霧が拳を握る。


「やったか?」


ダークが息を吐く。


「一旦な」


ラークは空を睨む。


「終わりではない」



深層。


裂け目は、まだある。


だが静か。


次の手を準備している。


カイが瑛斗を見る。


以前よりも、明確な意思。


共存。


「そうだ」


瑛斗は頷く。


「一人じゃない」


カイが続ける。


分担。


「お前は広げろ」


瑛斗は言う。


「俺は選ぶ」


役割が、確定する。


双選択。


システムとして成立する。



その瞬間。


さらに上。


管理層より上。


観測すらしていなかった領域から。


新たな視線。


重い。


深い。


そして。


“興味”。


ダークが低く呟く。


「……上の上が来たか」


瑛斗は空を見る。


裂け目の向こう。


まだ見えない何か。


だが確実に。


次の段階。



世界は、修正を拒み始めた。


では次は何か。


削除か。


それとも。


再定義か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ