第33話「核」
夜明け前の空は、まだ色を持たない。
金輝島・解析区画。
巨大スクリーンに、瑛斗の波形が映し出されていた。
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「……これは」
国連代表・丸山が、低く息を呑む。
「王権とは、別の構造です」
解析担当が、指を走らせる。
「王権は、“命令”」
「しかし、彼の中心にあるのは――」
「選択核」
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皐月が、瑛斗を見る。
「……選択核?」
瑛斗は、首を傾げた。
「……俺の中に?」
パラケルススが、姿を現す。
『……本来』
『王権は、外付けだ』
『だが』
『“選ぶ力”は、内側』
『人格と、不可分』
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ラークが、眉をひそめる。
「……つまり」
「王でなくなっても」
「選ぶ限り、核は残る」
『その通り』
パラケルススは、静かに頷く。
『そして』
『それは――』
『世界合体の、接着点だ』
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空気が、凍る。
丸山が、震える声で問う。
「……それが、奪われたら?」
『境界は、定義を失う』
『世界は』
『剥がれる』
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瑛斗は、無意識に胸に手を当てた。
(……俺が)
(……繋ぎ目)
恐怖が、湧く。
だが――
薄い。
それでも、確かにある。
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その頃、虚界。
魔王デイドは、ダークに言った。
「……核を壊せば」
「世界は、戻る」
「それが、目的だろう」
ダークは、首を振る。
「……壊すだけでは、足りない」
「書き換える」
「王でも、人でもない」
「第三の定義を、置く」
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金輝島。
解析は、続く。
「……選択核は、増幅している」
「瑛斗が、“人として選ぶ”ほど」
「安定度が、上がる」
皐月が、息を吸う。
「……じゃあ」
「王権を使わないのは、正解?」
パラケルススは、肯定も否定もしない。
『……刃だ』
『使い方次第で』
『守りにも、破壊にもなる』
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瑛斗は、ゆっくりと立ち上がる。
「……だったら」
「俺は」
「人として、選び続ける」
静かな声。
だが、芯があった。
ラークが、微笑む。
「……王より、厄介だな」
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ノアが、口を開く。
「……核は」
「奪えない」
「奪えば、壊れる」
「だから、ダークは――」
「揺さぶる」
沈黙。
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その夜。
瑛斗は、眠れずにいた。
夢の中。
無数の世界が、分岐する。
その中央に、自分。
「……選べ」
声が、重なる。
(……全部は、無理だ)
(……でも)
(……一つなら)
瑛斗は、手を伸ばす。
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目を覚ますと、胸が熱かった。
痛みではない。
(……生きてる)
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虚界。
ダークは、静かに宣言する。
「次は」
「選択を、迫る」
「逃げ場のない、問いを」




