表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/68

第31話「王ではなく」

警報音は、すでに止んでいた。


だが、空気は張り詰めたまま。


金輝島・外縁区域。

歪んだ境界が、薄く脈打っている。



「……規模は小さい」


ラークが、周囲を見渡す。


「魔族でも、精霊でもない」


皐月は、瑛斗を見る。


「……行ける?」


瑛斗は、一度だけ胸に手を当てた。


(……大丈夫)


「……王権は、使わない」


「……人として、行く」


その宣言に、ラークは小さく息を吐いた。


「……それでこそだ」



歪みの中心。


影のような存在が、滲み出ていた。


形は、人に近い。


だが、中身がない。


「……境界残滓」


精霊族ルルが、低く言う。


「王権の余波で、生まれた」


「……放置すれば、拡大する」


瑛斗は、剣を抜く。


(……怖い?)


胸の内を探る。


――薄い。


だが。


(……守りたい)


その感覚は、まだ、確かだった。



「……来る!」


皐月の声。


残滓が、一気に膨張する。


攻撃は、不規則。


瑛斗は、身体を低くし、直感で動く。


感覚は、鈍い。


だから――

考える。


一手ずつ、選ぶ。


「……今!」


皐月の指示。


瑛斗は、剣を振り抜く。


切断。


残滓が、悲鳴を上げる。


だが、完全には消えない。



「……押し切れない!」


ラークが、踏み込む。


「瑛斗!」


その瞬間。


瑛斗の胸に、衝撃。


吹き飛ばされ、地面を転がる。


視界が、白む。


(……王権なら)


(……一瞬で)


だが――

歯を食いしばる。


「……使わない!」


立ち上がる。


膝が、笑う。



皐月が、前に出る。


「……下がって!」


彼女の手に、小型魔導具。


閃光。


残滓の動きが、鈍る。


「……今だ!」


瑛斗は、最後の力で剣を突き立てた。


核が、砕ける。


歪みが、静まる。



沈黙。


波の音が、戻ってくる。


瑛斗は、その場に座り込んだ。


「……はぁ……」


ラークが、肩を叩く。


「……勝ったな」


瑛斗は、苦笑した。


「……ギリギリ」



皐月が、そっと言う。


「……怖かった?」


瑛斗は、少し考えてから答えた。


「……分からない」


「でも」


「……逃げたくは、なかった」


皐月は、頷いた。


「それで、十分」



司令部。


報告を受けた松田首相は、深く息を吐いた。


「……王でなくても、戦える」


「……それが、一番危険で」


「……一番、希望ですね」



虚界。


ダークは、微笑んだ。


「……いい」


「王が、王を降りる」


「なら次は――」


「奪いに行こう」


虚界の空が、歪む。



金輝島。


夜。


瑛斗は、剣を拭きながら呟いた。


「……王じゃなくても」


「……俺は、選べる」


境界は、答えない。


だが。


確かに、彼の足元は揺れていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ