第22話「条件」
その通信は、前触れなく届いた。
国連、日本政府、金輝島司令部。
すべての回線に、同時に。
画面に映ったのは――
虚界の玉座。
そして、そこに座す存在。
「――初めまして、と言うべきかな」
低く、愉悦を含んだ声。
デーモンロード・ダーク。
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会議室は、凍りついた。
「……魔神族が、通信を?」
丸山の声が、わずかに震える。
ダークは、肩をすくめる。
「そう警戒するな」
「今日は、“交渉”だ」
⸻
金輝島。
瑛斗は、モニターを見つめていた。
背中に、嫌な寒気。
(……来た)
皐月が、小声で言う。
「……話す気、なの?」
「話す気は、ある」
瑛斗は、短く答えた。
「信用は、しない」
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ダークは、楽しそうに指を鳴らす。
「単刀直入に言おう」
「我々は、全面侵攻を止める」
世界が、ざわつく。
「その代わり」
ダークの瞳が、鋭く細まる。
「――王を、こちらに寄越せ」
沈黙。
⸻
「……ふざけるな!」
誰かが、叫んだ。
だがダークは、意に介さない。
「君たちは、理解しているはずだ」
「王権は、世界の歪みだ」
「いずれ、彼は壊れる」
「ならば」
「我々が、“管理”してやろう」
皮肉な笑み。
「君たちの言葉を、借りれば――」
「兵器の管理だ」
⸻
瑛斗の胸が、強く脈打つ。
国連会場。
クリス・ロンドが、目を伏せた。
「……侵攻停止は、確実なのか」
ダークは、即答する。
「王が来れば、境界は安定する」
「少なくとも、君たちの世界はな」
条件は、あまりに重かった。
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金輝島。
皐月が、瑛斗の腕を掴む。
「……行く、つもり?」
瑛斗は、答えなかった。
代わりに、ルルが叫ぶ。
「嘘!」
「魔神族の、言葉なんて!」
ダークは、画面越しに微笑む。
「精霊族」
「君たちこそ、分かるはずだ」
「王は、“境界そのもの”」
「世界が二つある限り」
「彼は、削られ続ける」
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精霊神パラケルススが、低く唸る。
『……真実を、混ぜている』
『だからこそ、厄介だ』
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瑛斗は、一歩前へ出た。
「……質問がある」
ダークは、目を細める。
「ほう?」
「俺が行けば」
「本当に、侵攻は止まる?」
「世界は、守られる?」
ダークは、玉座から立ち上がる。
「約束しよう」
「少なくとも――」
「私が王を壊すまで」
空気が、凍る。
⸻
皐月の声が、震えた。
「……それ、守るって言わない」
瑛斗は、ゆっくり息を吐く。
(……選択)
(これも、選択)
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国連では、意見が真っ二つに割れていた。
「受け入れるべきだ」
「拒否すべきだ」
「時間がない!」
境界歪曲の、新たな兆候。
時計の針が、容赦なく進む。
⸻
ダークは、腕を広げた。
「期限は、三日」
「それまでに、答えを出せ」
「王よ」
視線が、瑛斗を貫く。
「君は――」
「世界と、自分」
「どちらを、選ぶ?」
通信は、一方的に切れた。
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静寂。
瑛斗は、拳を握りしめる。
「……三日か」
ラークが、低く言う。
「時間切れの、選択だな」
皐月は、必死に言葉を探す。
「……一人で、決めないで」
瑛斗は、彼女を見て、微笑んだ。
「……決めない」
「皆で、決める」
だが――
境界は、すでに軋んでいた。




