第21話「英雄と兵器」
世界は、一夜で変わった。
金輝島で起きた現象は、隠しきれなかった。
映像。
衛星データ。
各国観測網。
すべてが、同じ結論を指している。
――人が、世界に命令した。
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国際連合総会、臨時会議。
巨大スクリーンに、境界修復の映像が映し出される。
丸山が、重い声で告げた。
「……これが、田中瑛斗氏の力」
会場が、ざわめく。
「救世主だ」
「いや、制御不能だ」
「国家が、管理すべきだ」
言葉は、いつの時代も同じだった。
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松田美由紀は、机を叩いた。
「彼は、日本国民です」
「兵器ではない」
クリス・ロンドは、静かに言う。
「感情を持つ兵器ほど、危険なものはない」
「だからこそ」
「管理が必要なのです」
沈黙。
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一方、金輝島。
瑛斗は、隔離に近い医療区画にいた。
外は、常に警備兵。
「……随分、物々しいな」
瑛斗は、苦笑する。
皐月は、怒りを隠さない。
「守ったのに」
「これ?」
ラークは、壁を蹴る。
「人間は、信用しない生き物だ」
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ルルが、浮かびながら言う。
「世界は、“王”を必要としてる」
「でも同時に、“王”を恐れてる」
「……当然だけどね」
瑛斗は、天井を見つめた。
(……俺は、何なんだ)
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その夜。
瑛斗は、夢を見た。
境界の向こう側。
人の輪郭が、少しずつ削れていく。
誰かが、言った。
『役目を果たせ』
『感情は、不要だ』
瑛斗は、叫ぼうとして――
目を覚ました。
「……はぁ」
冷や汗。
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翌朝。
国連から、正式通達が届いた。
「田中瑛斗氏を、国際管理下に置く」
「王権使用には、事前承認が必要」
「拒否の場合――」
言葉は、濁されていた。
だが、意味は明白だ。
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皐月が、声を震わせる。
「……選択、奪うの?」
瑛斗は、ゆっくりと立ち上がる。
「……俺が、選ばれた存在なら」
「選ぶ権利は、俺にある」
その声は、静かだが、揺るがない。
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同時刻。
虚界。
ダークは、その光景を“見て”いた。
「……人間は、面白い」
「王を、自ら縛る」
嗤い。
「なら」
「その鎖を、利用しよう」
彼は、魔神族に命じる。
「次は、“交渉”だ」
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金輝島。
空に、不穏な黒雲。
精霊神パラケルススが、低く告げる。
『次の戦いは、剣ではない』
『選択の、物語だ』
瑛斗は、拳を握る。
「……なら」
「俺は、俺のまま選ぶ」
遠くで、境界が不気味に鳴った。




