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【短編小説】男3と女2の組み合わせが怖い

掲載日:2025/12/21

 街で男三人と女二人の組み合わせが歩いているのを見ると、ひとり余った男が消えやしないかと不安になる。

 そうして、消えそうな男に二人の女のどちらかがコナをかけて揉め事になり、仲裁に入った奴らもまとめて、その五人組はこの地球から消えるのだ。

 それは、男二人と女三人でも同じかも知れない。とにかく、五人の男女と言うのは目に毒だ。


「おまえ、おれ以外とも寝ているんだろ」

 何気なく言ってみたが、当然そこには嫉妬だとか恨みによく似た憎悪とかが込められていて、敏感な女は帰巣本能に目覚めると、勢いよく部屋を飛び出していった。

 取るものも取り敢えず、と言った具合だったけれど、おれはふと、その女がどこから来たのか気になってきて、後を付けてみようと思った。


 おれは手近にあった服を急いで引っ掛けて部屋を出ると、駅に向かって小走りに進む女の後を、一定の距離を保って、ついて走った。

 運動をするにはちょうど良い、夏の終わりの夜の匂いがした。

 具体的に言えば、死の季節が終わり生きることに対する匂いで、さらに言えば、前を走る女の、生理の臭いに似ていた。


 飛び出した女は、駅の自動改札機を通り抜けて、そのままの速度で階段を駆け上がると、同じような速度でホームに滑り込んできた電車に、砂糖が水に溶けるみたいに、鮮やかに乗り込んでいった。

 おれもその隣りの車輌から、どうにか同じ電車に乗り込んで、ほっと胸を撫で下ろした。

 窓の外を、夜の景色が、巻き取られるように流れていくのが見えた。


 例の女は、窓から見える暗がりと光を眺めながら、自分の爪を噛んでいた。

 きっと、綺麗に塗られた爪に光る星たちは、ほとんど剥がれてしまっているだろうなと思った。

 ただ、もうその爪を見ることは無いだろう。どんな形の爪をしていたか、すでに忘れてしまいそうだった。

 もしかしたら、ちゃんと見たことがなかったのかも知れない。


 予想通り、3つ先の駅でその女は、電車を降りた。

 その街には、俺の同僚が住んでいる。

 改札を出た女は、やはり商店街を抜けて行くと、見覚えのある、築浅の白いマンションに向かって行った。

 おれは物陰に身を潜めて、煙草に火をつけた。



 女は、インターホンを押してから、何かを大きな声で、身振り手振りを使いながら話していたが、やがてモニターを叩くと、身を翻して、マンションから飛び出した。

 おれも煙草を踏み消すと、さっきと同じように、再び女の後をつけた。


 女は来た道を戻り、再び電車に乗ると、次は大きな駅で地下鉄に乗り換えた。

 おれの知らない場所に行くらしい。

 少し緊張しながら、女の後をつける。



 そうして何駅か、窓の外を流れていく黒い壁と、無機質な蛍光灯を見ながら、夜の街との違いを探してみた。

 何もわからなかった。

 女は、爪の星を噛んで落とすと、おれの知らない、地味な名前の駅で地下鉄を降りた。

 


 女は、乗っていた地下鉄と同じような速度で駅を走り、改札の先にある階段を駆け上がると、商店街を走っていった。

 おれも、何とかペースを落とさずに、女のあとを追うと、道を折れて、住宅街の中に向かうのが見えた。

 女は、立ち並ぶ家々の中でも、一際地味に見える一軒家の前に立つと、先ほどと同じ様に、インターホンを押した。


 おれは、電信柱に隠れて、女の声を聞いた。

「あの人に全部言うなんて、ズルい」

 そう聞こえた。

 しかしインターホンは「俺は知らない、俺は何も言ってない」と言うと、あとは女が何度インターホンを押しても、何も言わなくなった。

 女は、しばらくインターホンを押したり、叩いたりしていたが、パトカーのサイレンが聞こえると、インターホンに前蹴りを叩き込んで、立ち去った。


 女は、そのまま住宅街を抜けると、大きな通りに出て、タクシーを拾った。

 おれも慌てて後続のタクシーを拾い、運転手に「前のタクシーを追いかけてくれ」と頼んだ。

 運転手は嬉しそうに「浮気か何かの調査かい?尾行は初めてだから、失敗したらごめんな」と言った。


 浮気の調査と言うか、何股かをかけられている事を知って、縁を切ると言ったらこうなったのだが、説明をする気になれなかったので、曖昧に笑って誤魔化した。


 女が乗ったタクシーは、メーターをぐるぐる回して、見たこともない町で降りた。

 そのタクシーをやり過ごして、少し行った場所でタクシーを降りた。

 運転手は笑顔で何か言っていたが、何を言っているのか聞き取れなかった。


 女は、タクシーと同じような速度で走って、比較的新しく見えるアパートにたどり着くと、その勢いのまま階段を駆け上がり、ある部屋のドアを激しく叩いた。

 すると、中から出てきたのは、元同僚の女だった。


 噂では、職場の男を好きになってしまったが、走り女が関係にある事を知っていたので、全てをバラした、性格の悪い、破滅型の女だった。

 ちなみに、おれも、そのバラし女と関係していたし、さっきの同僚も、バラし女と関係していた。二人目の男は、どうか分からないけれど、きっと関係していたのだろう。


 男と、女の、関係性は、ままならないと考えていると、走り女は、肩で息をしていた呼吸を、すぐに整えると、頭のバッカルコーンを開いて、目の前のバラし女を、頭から食べてしまった。



 そして振り向くと「おい、見てるんだろう」と言った。


 おれは、彼女のバッカルコーンに食いちぎられる事を想像して、なぜか激しく勃起したが、おれは、実際には、走り女が、おれを頭から齧りながら「この甲斐性無しめ」と言うのを、どうにか聞きながら、自分の意識が遠ざかるのを

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