【第1章】海から現れた六脚脊椎動物の祖形(3)
1-3 海から陸へ:六脚構造はどのように誕生したか
六脚脊椎動物類(Hexavertebrata)が誕生した背景には、海中で形成された外骨格+内骨格の混成形態が
陸上環境への適応圧を受けた結果として『六脚という第三の付属肢構造』へ転化したという仮説がある。
本節では、その構造的・生態的な変遷を、進化過程の段階ごとに再構成する。
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◆ 1. 海中における前肢・触肢の『機能分離』が六脚の萌芽となる
ユーリプテリド類に見られるように、海生捕食者の多くは
・推進のための肢(歩脚/鰭)
・捕食のための肢(触肢/捕脚)
を明確に分離させる傾向を持つ。
初期六脚類の祖先と考えられる中間形態では、この『機能分離』がすでに始まっていたと推測される。
つまり、
・前方の2本 → 捕食・操作・感覚
・中間の2本 → 姿勢保持
・後方の2本 → 推進・蹴り運動
という『三つの運動ユニット』が存在していた。
これがそのまま、陸上でのー『三対の付属肢(六肢構造)』ーへと移行する基礎設計となった。
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◆ 2. 陸上移行期に生じた『重力問題』が肢の追加を促した
脊椎動物の陸上進出では、最初期に以下の課題が発生したことが知られている。
・体重の支持
・乾燥への対策
・推進力の確保
・振動・衝撃の吸収
特に『重力問題』は大きく、海中で浮力の補助を受けていた身体は、陸上では自重に耐える必要があった。
四肢動物は
・胸鰭 → 前肢
・腹鰭 → 後肢
という2対の肢で対応したが、六脚類の祖先はすでに
・捕食・感覚肢(前)
・姿勢保持肢(中)
・推進肢(後)
の三ユニットを持っていた。
これにより、陸上では 『四肢より安定した姿勢』を獲得できた。
特に中間肢(第2対)は、『進化的に新しい支持構造』として重要であったと考えられる。
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◆ 3. 外骨格の退縮と内骨格の強化が『六脚化』を確定させた
陸上環境では、外骨格には致命的な弱点がある。
・成長のために脱皮が必要
・大型化に不向き
・可動域が制限される
・乾燥による硬化・脆化
初期六脚脊椎動物類は陸へ進出する過程で、外骨格の縮小 → 内骨格の強化 → 鱗状外皮への変換、という流れを辿ったと推測される。
この過程で、
・外骨格由来の『触肢』が柔軟化して操作肢となる
・内骨格の筋付着点が大型化し、陸上歩行に適応
・中間肢が『支持脚』として発達
という変化が生じ、『六脚構造』が安定的に成立した。
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◆ 4. 六脚構造の利点と、その後の多様化
六脚化の最大の利点は 安定性 にある。
三点支持は物体を確実に立たせる基本であり、六脚動物は常に三点以上で地面を把持できる。
その結果、初期六脚類は:
・軽量級〜中型級で極めて俊敏
・不安定な地形(湿地・浅瀬・岩場)に強い
・傾斜のある地形でも転倒しにくい
・遊泳→歩行の移行がスムーズ
という特徴を持った。
これが、初期陸上生態系で六脚系統が有利なニッチを獲得する理由となった。
のちに、進化分岐により
・小型化+外骨格特化 → 昆虫類
・大型化+内骨格特化 → ドラゴン類
・知性化+触肢の高度操作化 → スフィンクス・ケンタウロス的人型六脚類
・空中進出 → 有翼人・グリフィン系統
など、非常に多様な形態に広がったと考えられる。
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◆ 5. 陸上六脚類は『消えたのではなく、分散して痕跡を残した』
六脚脊椎動物類が化石として残りにくい理由は以下。
・軟骨主体の内骨格 → 化石化しない
・外骨格の縮小 → 残らない
・山岳・森林など化石好条件から外れた環境に生息
・人類史の初期段階で駆逐・迫害
・神話化されて記録が象徴に置き換わる
結果として、『実在したのに化石として残らない』という逆説的状況に陥る。
しかし、文化記憶の断片は六脚類の存在を示唆している。
・グリフィン(四脚+翼)
・ケンタウロス(四脚+人型上体)
・スフィンクス(獅子体+人頭+翼)
・天使(人+翼)
・竜類(四脚+翼、または六肢構造)
これらの普遍性は、六脚構造が『観察によって得られた形』である可能性を強く示す。
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◆ 結語
六脚構造は、節足動物に特有の形態として扱われてきた。
しかし、海中の混成骨格を持つ中間形態から陸上へ移行する過程で、六脚脊椎動物類が誕生したと仮定することで、
・昆虫と脊椎動物の奇妙な乖離
・四脚中心史観の偏り
・神話生物の六肢構造の普遍性
といった問題が、統一的に説明される。
六脚脊椎動物類は、四肢動物と昆虫の間に隠れた『失われた第三系統』として極めて自然に位置づけられる。




