【第1章】海から現れた六脚脊椎動物の祖形(2)
1-2 外骨格+内骨格の併存が示す進化的中間形態
外骨格(exoskeleton)と内骨格(endoskeleton)は、一般に『互いに相反する構造』と理解されることが多い。
現生の動物群では、節足動物が外骨格、脊椎動物が内骨格と、はっきりした二分構造が採用されており、両者はほぼ完全に排他的な形態として扱われている。
しかし、古生代の化石記録を精査すると、外骨格と内骨格の両方を併存させた生物群が複数存在したことが判明しており、その代表例としてユーリプテリド類が挙げられる。
本節では、この併存構造が六脚脊椎動物類(Hexavertebrata)成立の『鍵』となり得る理由を考察する。
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◆ 1. 外骨格の強度と内骨格の柔軟性の『役割分担』
外骨格は、外部からの物理的衝撃に強く、表面からの保護・防御に優れる一方で、可動域が限定されやすいという欠点がある。
一方、内骨格は柔軟で、筋肉の収縮・伸長に合わせて運動性を高めるが、外部衝撃には弱い。
ユーリプテリドはこの二つの構造を『同時』に持つことで、
・外骨格 → 防御・外部支持
・内骨格(軟骨性) → 運動・柔軟性確保
という『機能の分担』を実現していた可能性が高い。
これは現生の動物構造とは大きく異なるが、むしろ脊椎動物の外皮骨(皮骨)と内骨格の関係に類似する。
例:
・ワニの皮骨板
・魚類の鱗(真骨性)
・一部恐竜の装甲
・哺乳類の皮骨化(例:アルマジロ)
外骨格+内骨格の混成構造は、『脊椎動物的進化』の萌芽と見なせる。
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◆ 2. 外骨格から内骨格へ:進化の『流れ』は単純ではない
一般に進化の教科書では、「外骨格 → 内骨格」の順に進化が進んだという単純化がなされるが、実際にはこのプロセスは複雑である。
研究例によると、古生代にはすでに以下のような多様な『混成構造』が存在した。
・外骨格の下に軟骨性支柱が並走する種
・体節ごとに骨板が内骨格化した種
・外骨格の部分的消失+内骨格の局所強化を行った種
これらは、六脚脊椎動物類の祖形として非常に重要である。
なぜなら六脚類では、
ー外骨格 → 縮小、内骨格 → 強化(硬骨化・鱗化・翼化)ー
という『逆方向の進化』を想定する必要があるためである。
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◆ 3. 混成構造を支える神経・筋分布の『脊椎的特徴』
外骨格と内骨格が併存する場合、筋肉と神経の配置に特徴が出る。
◆ 節足動物
・筋肉は外骨格内壁へ直接付着
・神経節が体節ごとに分散
◆ 脊椎動物(初期)
・内骨格の骨梁・軟骨部に筋が付着
・中枢神経が前方集中(脳化)
ユーリプテリドの化石構造は、『節足動物的な外骨格』の中に、『脊椎動物的な筋付着点の局所集中』を示す痕跡がある。
例えば、
・前肢(捕脚)基部の筋付着部の大型化
・尾部基幹節の強固な構造
・体幹筋束が前後方向に強調された痕跡
これらは脊椎動物に近い『集中型神経支配』の萌芽であり、単純な節足動物とは異質である。
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◆ 4. 内骨格の材質は『軟骨性』であった可能性
内骨格の痕跡は化石にはほぼ残らない。
しかし、節の内側構造に見られる空隙パターンは、脊椎動物の軟骨性骨格――
すなわち、軟骨魚類の支持構造と極めて似ている。
軟骨は化石化しにくいため、この構造は痕跡がほぼ残らない。
つまり、外骨格の裏側に軟骨支柱が存在していた場合、化石ではー『外骨格だけの生物』に見えてしまうー。
六脚脊椎動物類の祖形がこの構造であれば、化石記録から『完全に隠れる』のは自然なことである。
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◆ 5. 六脚類の進化における『中間形態』としての意義
六脚脊椎動物類が陸へ進出したと仮定すると、以下の段階を経ると推測できる:
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段階1:外骨格+軟骨(ユーリプテリド型)
→ 海中での防御+柔軟運動を両立
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段階2:外骨格の部分的縮小+内骨格強化
→ 陸上移行で可動性が重要となる
→ 触肢の一部が副肢として残存
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段階3:外骨格の消失または鱗化
→ 内骨格が主体となる
→ ここで『脊椎動物的な六脚構造』が成立
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段階4:系統分岐
・小型化+外骨格特化 → 昆虫へ
・大型化+内骨格特化 → ドラゴン型へ
・知性化+触腕分化 → スフィンクス・ケンタウロス型へ
・翼化+空中移動 → 有翼人・グリフィン型へ
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◆ 結語
外骨格と内骨格の併存は、進化生物学において『異端の構造』として扱われてきた。
しかし、ユーリプテリド類に見られるこの混成構造は、むしろ脊椎動物と節足動物の境界を橋渡しする『中間形態』として極めて自然である。
六脚脊椎動物類の祖先がこの構造を持っていたとすれば――
・化石に痕跡を残さない
・節足動物と脊椎動物の中間
・六脚の成立基盤を持つ
という一見『矛盾』に見える現象がすべて整合的に説明される。
次節では、この中間形態がどのように陸上環境へ適応し、六脚構造そのものがどのように形成されたかを論じる。




