【序章】四脚脊椎動物だけが正史ではない。(4)
序章の④ 『六脚類』という第三の仮説系統
脊椎動物の系統樹は、長らく「魚類 → 四脚動物」という直線的な進化として説明されてきた。
この枠組みは、現生の脊椎動物の形態がすべて『四肢』に収束していることを根拠としている。
しかし、この進化像は、脊椎動物が本来持ち得た『多様性の可能性』の一部しか反映していない。
本書が提唱する「六脚脊椎動物類(Hexavertebrata)」仮説は、脊椎動物の進化史が決して単一の系統によって説明されるものではなく、太古には四脚類とは異なる独立系統が存在した可能性を指摘するものである。
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◆ 1. 第三の系統を想定する理由
六脚脊椎動物類仮説は単なる空想ではなく、
以下の三つの観点から、進化生物学的に十分考慮すべき『仮説的系統』である。
●(1)形態的可能性:六脚構造は脊椎動物でも成立し得る
六脚構造(3対の付属肢)は、節足動物における成功例が示す通り、陸上で極めて安定し、汎用性の高い運動様式である。
脊椎動物が四肢以外の形態を採用しなかった理由は説明されておらず、「四脚が唯一の解」という理解には科学的根拠が存在しない。
むしろ、初期脊椎動物の基盤構造は柔軟であり、付属肢数の多様化は phylogenetic constraint(系統的拘束)によって『結果として四脚に固定化された』だけである可能性が高い。
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●(2)化石記録の欠落:六脚系統が『残らなかった』だけではないか
六脚構造をもつ脊椎動物が存在したとしても、もしそれが
・軟骨主体の骨格
・外骨格と内骨格の併用
・湿地帯・沿岸・山岳地帯といった化石化しにくい環境
で生息していたのだとすれば、その記録は極端に残りにくい。
実際、サメ類は軟骨性であるため、2億年以上栄えているにもかかわらず化石は断片的である。
同じことが六脚脊椎動物類に起こった可能性は十分にある。
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●(3)文化・神話・美術に残る『六脚型動物』の普遍性
世界各地の神話生物の造形には、現生脊椎動物には存在しない『六肢構造』が極めて高頻度で出現する。
・グリフィン(四脚+翼)
・ペガサス(四脚+翼)
・ケルビム(複数翼)
・スフィンクス(獅子体+人頭+翼)
・ドラゴン(四脚+翼、あるいは六肢)
・天使(人+翼)
これらは、偶然や象徴では説明し難い共通性を持ち、『観察経験の記憶』を反映した可能性が高い。
文化的記憶が示す『六肢構造』の普遍性は、太古に六脚脊椎動物類が地球上に存在した証拠の一端と捉えられる。
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◆ 2. Hexavertebrata(六脚脊椎動物類)の仮説的特徴
本書では、六脚脊椎動物類を次のように仮説的に定義する。
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●(A)「三対の付属肢」を持つ脊椎動物
脊椎動物の体節構造から見れば、三対の付属肢は特殊ではあるが不可能ではない。
むしろ、最初期の脊椎動物は複数の体節性筋群(myotome)を持ち、その分節化が肢の独立化につながった可能性がある。
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●(B)外骨格と内骨格の混在
初期:外骨格(クチクラ質)を保持
中期:外骨格と軟骨性内骨格の併存
後期:外骨格を放棄し、硬骨化・鱗化・翼化へ多様化
という三段階の進化ルートが推測される。
この『外骨格→内骨格への移行』は、昆虫が外骨格を捨てなかったのとは逆のルートであり、進化の分岐を説明する上で極めて合理的である。
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●(C)三核脳(Tri-lobal brain)
六脚類では、複数の付属肢と触角的補助器官を統合処理する必要から、脳構造が並列処理に特化した三核型
であった可能性が高い。
これは、千手観音・阿修羅・天使像に見られる多腕・多視点構造の象徴化とも一致する。
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●(D)陸上生態ニッチの初期獲得者
脊椎動物より1億年先に陸上へ進出可能な形態を持ち、初期の陸上生態系では
・捕食者
・草食者
・清掃者
として幅広い役割を担っていたと考えられる。
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◆ 3. 六脚類は『あり得た存在』ではなく、『欠落させられた存在』である
四脚中心史観では、六脚脊椎動物類は『あり得ない形態』とされる。
しかし、進化の歴史を科学的に眺めれば、六脚類の存在を否定する根拠はなく、むしろ存在していたと考える方が矛盾が少ない。
・化石記録の偏り
・六脚構造の利点
・神話的普遍性
・進化収斂の欠如
・人類史による記憶の改変
これらを考慮すれば、六脚類の系統は「存在しなかった」のではなく、『残らなかった』だけなのではないか。
本書で論じる『六脚脊椎動物類』は、進化生物学的にも文化史的にも合理的に位置づけ得る第三の仮説系統であり、これまでの脊椎動物進化像の盲点を照らす試みである。




