【第6章】 なぜ六脚脊椎動物類は絶滅したのか(5)
6-5 六脚類の骨格が化石に残らない理由
― 消えた系統が“痕跡ゼロ”になった構造的要因 ―**
六脚脊椎動物類(Hexavertebrata)が進化史からほぼ完全に姿を消し、
化石記録にすら痕跡を残さなかったことは、本系統を仮説とする上で最大の障壁である。
しかし、化石保存の条件を精査し、六脚類の推定骨格構造を照合すると、
“残らなかった”ことはむしろ必然であったことが明らかになる。
本節では、六脚類の骨格がなぜ現生化石相に一切登場しないのか、
その保存学的理由を検証する。
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◆ 1. “軟骨主体”という保存に最も不利な骨格構造
六脚脊椎動物類の祖形は、ユーリプテリドを代表とする
“外骨格+軟骨内骨格”という混成構造を持っていたと考えられる(第1章参照)。
この内骨格は、硬骨魚・陸上脊椎動物のように石灰化していないため、
保存性が著しく低い。
軟骨は以下の理由で化石化しにくい:
石灰沈着が少なく、鉱化しない
有機成分の割合が高く、分解されやすい
軟部組織のため嫌気環境を要する
圧力がかかると変形・消滅しやすい
サメ・エイ(軟骨魚類)の化石が“ほぼ歯と棘しか残らない”のはその典型例である。
六脚類の軟骨骨格が残らないのは、
構造上当然の結果である。
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◆ 2. 外骨格の“有機質化”と化石化しないキチン複合体
六脚類が初期に持っていた外骨格は、
節足動物のようにキチンを主体とする有機質外骨格であり、
これも化石化条件に極めて不利である。
キチンは:
分解速度が早い
微生物に極めて分解されやすい
土壌酸性度で速やかに崩壊
石灰質ではないため鉱化しない
古生代巨大昆虫の外骨格がほとんど残存しない理由と同じく、
六脚類の外骨格も痕跡すら残らなかった可能性が高い。
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◆ 3. 陸上進出後の“鱗化”は保存に不向きな構造だった
大型化・中型化した六脚類は、
外骨格を縮小し、皮骨(dermal bone)や鱗へと置き換える方向へ進化したと推測される。
しかし、推定される鱗の構造は
真骨性(魚類タイプ)ではなく、
ケラチン系(爬虫類・哺乳類タイプ)に近かった
と考えられる。
ケラチン鱗は:
石灰化しない
乾燥すると脆く崩壊する
皮膚由来で腐敗しやすい
保存されても“皮膚片”として判別困難
ケラチン性の構造物は、時間的スケールでほぼ100%消滅する。
つまり、ドラゴン類やスフィンクス類の“鱗や外皮”は、
残るはずがない素材で構成されていた可能性が高い。
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◆ 4. 死亡環境が化石形成に圧倒的に不向きだった
六脚類の生息地は推定すると以下の特徴がある:
山岳地帯(天狗・有翼人系)
火山帯(ドラゴン系)
乾燥高地(スフィンクス系)
森林・渓谷(グリフィン系)
沿岸湿地(初期種)
これらの環境はすべて化石化の好条件とは真逆である。
化石ができやすい環境
湖底
海底
泥流堆積層
海成堆積物
六脚類の主な生活圏
高地→遺骸が散逸
火山帯→高熱で分解
森林→腐敗が早い
岩場→堆積が起こらない
六脚類の主分布域は、
「化石化しにくい」「遺骸が崩壊しやすい」
という条件が揃っていた。
構造が残らず、環境も残さない。
これは“化石不在”の完全な説明となる。
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◆ 5. 大型種が“乱獲・回収された”可能性
これは第7章(竜骨・竜鱗)で詳細に扱うため、ここでは導入のみとする。
大型六脚類は、
死亡後も遺骸が文化的・実用的価値のある素材として集中的に回収された可能性が高い。
鱗 → 防具
骨 → 漢方・宗教儀式
角 →宝具・飾り物
靭皮(皮)→盾
腱 →武器素材
内臓 →薬効
中世の大型野生動物が絶滅した際も同様の“遺骸消費”が起こっている。
死体が残らないのは、
自然原因だけでなく文化的要因も強く作用したと考えられる。
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◆ 6. “化石ゼロ”こそ六脚類存在の説明になる
総合すると、六脚類の化石が残らなかった理由は四つに集約される。
1. 内骨格が軟骨性で鉱化しなかった
2. 外骨格・鱗・皮膚が有機質で腐敗した
3. 生息環境が化石化の条件から外れていた
4. 大型種の遺骸は人間社会に回収された可能性が高い
つまり、六脚類の化石が残らなかったのは、
“存在しなかった”からではなく、
“残るはずのない構造と環境”だったからである。
これは、六脚類仮説の大きな弱点ではなく、
むしろ存在の証拠とすら言える。
なぜなら“複数の独立した要因”が同一方向に作用し、
六脚類の痕跡を消し去ったという事実そのものが、
六脚類が長期間地球上に存在し得た合理的背景を支えるからである。




