【序章】四脚脊椎動物だけが正史ではない。(3)
序章の③ 昆虫と脊椎動物の不自然な乖離
昆虫(Hexapoda)は、地球上で最も繁栄した動物群である。
種数は100万を超え、個体数は脊椎動物を桁違いに上回り、生態系の基盤として圧倒的な存在感を持つ。
一方、脊椎動物(Vertebrata)は多様性こそ増したものの、その基本構造は出現以来ほとんど変化していない。
体軸に沿った骨格、四肢の保持、内骨格中心の運動制御――
これらは4億年を経ても大枠に変化が見られない。
興味深いのは、この二つの大系統の間に存在する『構造的断絶』である。
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◆ 1. なぜ昆虫は「六脚」なのか、脊椎動物は「四脚」なのか
昆虫の六脚構造は、多脚節足類からの進化として説明される。
しかし、脊椎動物の四肢構造は、肉鰭類の側線器官が変形したものと解釈されているため、六脚構造との連続性は完全に断たれる。
だがここで根本的な疑問が生じる。
● なぜ生物界最大の成功者である『六脚』が、脊椎動物で一度も採用されないのか?
六脚構造は
・安定性が高い
・地形適応が容易
・小型〜中型に幅広く適用可能
・姿勢制御が簡易
・進化的に何度も独立発生する傾向がある
という「利点の塊」である。
にもかかわらず、脊椎動物では四脚が唯一の構造として固定化され、六脚が『選択肢としてすら存在しなかった』かのように扱われている。
これは進化の偶然では説明しきれない。
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◆ 2. 共通環境に生きながら「姿勢構造が完全に断絶」する不自然さ
さらに奇妙なのは、昆虫と脊椎動物が、同じ陸上環境で進化しながら、構造的に全く交差しない点である。
・昆虫:六脚、外骨格、触角、複眼、気管呼吸
・脊椎動物:四肢、内骨格、頭部感覚器、肺呼吸
これは、まるで『両者が互いを参照せず、独立した進化を強制された』かのようである。
通常、進化は収斂を伴う。
似た環境では似た形態が現れるのが自然である。
例:
・魚類とイルカは収斂して流線型
・コウモリと鳥は収斂して翼
・モグラとホリネズミは収斂して掘削肢
しかし、昆虫と脊椎動物には 収斂が一切生じていない。
陸上で成功するための条件は共有しているにもかかわらず、姿勢・感覚器・運動器官のいずれもが交わらない。
これは進化生物学における重大な異常点である。
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◆ 3. 『六脚の成功例』が地球上に一つしか存在しないという問題
六脚は昆虫において圧倒的成功を収めた。
にもかかわらず、六脚構造が節足動物に限定され、脊椎動物側では一度も採用されていないのは、不自然である。
六脚構造の利点は汎用的であり、脊椎動物が六脚化を試みなかった理由が見当たらない。
むしろ、脊椎動物に六脚系統が存在しなかったと考えるよりも、
ー六脚の脊椎動物は存在したが、記録に残らなかったー
と考える方が、進化史の整合性は高くなる。
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◆ 4. 昆虫の『触角』に残る『脊椎的要素』
昆虫の触角は外骨格の一部とされるが、その高い神経集中度・機能多様性は、むしろ脊椎動物的である。
・化学感覚
・振動感覚
・位置感覚
・気流検知
・温度・湿度感覚
これらは、脊椎動物が頭部神経に集中させる働きと重複する。
触角がまるで『前頭部に分岐した感覚器』のように進化している点は、昆虫が脊椎的な感覚設計を保持している痕跡のようにも見える。
もし、昆虫の祖先に『六脚の脊椎動物に近い系統』が存在したのだとすれば、その痕跡が触角に『機能として』のみ残った可能性がある。
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◆ 5. 昆虫の圧倒的繁栄と、脊椎動物の「四脚固定」は矛盾する
昆虫は地球環境に完璧に適応し、あらゆる『環境的隙間』を制覇した。
その成功要因である六脚構造が、脊椎動物側にはまったく採用されないというのは、進化の論理として不自然である。
脊椎動物が生き残っているのは、四脚構造が「最適」だったからではなく、
・偶然の連続
・環境の偏り
・六脚系統の絶滅
・化石記録の消失
・人類史による記憶の改変
といった条件が重なった結果生じた『生存者バイアス』である可能性が高い。
この乖離を説明するためには、『失われた六脚脊椎動物系統』の存在を仮定する方が合理的である。
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◆ 結語
昆虫と脊椎動物は、同じ地球で進化したにもかかわらず、その構造は驚くほど断絶している。
この不自然な乖離は、単に「節足動物と脊椎動物は別の系統だから」という説明では不十分であり、
・六脚の利点
・陸上環境の共通性
・機能的類似
・収斂進化の不発
などの矛盾を解消しない。
そして、その最大の理由は、脊椎動物側に『六脚の系統』が存在した痕跡が欠落していることにある。
六脚脊椎動物類仮説は、昆虫と脊椎動物のあいだに横たわるこの『断絶』の意味を問い直すための、新たな進化史の再構築である。




