【第2章】 陸上で分岐した六脚脊椎動物類(5)
2-5 大型化ルートと小型化ルートの分岐
陸上環境に適応した初期六脚脊椎動物類は、30〜80cm程度の小型〜中型の全長を持ち、外骨格と内骨格の併存、三核脳、触腕由来の狭角を特徴とする『中間的脊椎動物』として生態系に進出した。
しかし、陸上生態系における環境圧は地域ごとに異なり、六脚脊椎動物類は 二つの対照的な生存戦略へと分岐した。
それが、
・小型化ルート(外骨格特化)
・大型化ルート(内骨格特化)
である。
この分岐こそ、現代生物学では説明しきれない
『昆虫と神話生物の間に横たわる謎』を解く鍵となる。
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◆ 1. 小型化ルート:外骨格を残し、高繁殖型へ
(1)外骨格の保持がもたらした『縮小の連鎖』
小型化ルートは、主に乾燥地帯・草原・浅い林床など、捕食圧の高い環境に適応するための戦略として現れた。
外骨格は薄く軽量化し、気管呼吸が最適化することで、高い代謝効率を獲得した。
結果として:
・高い繁殖力(多産)
・圧倒的な個体数
・世代交代の高速化
・環境変化への迅速な適応
を可能にした。
これは 昆虫類(Insecta)の祖形である。
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(2)失われたもの:知性・大型化・長寿性
小型化は、環境適応としては有利であったが、
・三核脳の縮退
・内骨格の消失
・触腕機能の単純化
・六脚構造の固定化
・神経回路の簡略化
という「代償」を伴った。
つまり昆虫は六脚脊椎動物類の
『成功したが、より原始的な側面が強い分岐系統』である。
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◆ 2. 大型化ルート:内骨格特化と長寿性の獲得
(1)内骨格の硬骨化は大型化の前提条件
大型化ルートは、湿潤な森林・渓谷・海岸線・山岳など
重力に対して大きな体躯を維持できる環境で発生した。
外骨格は徐々に退化し:
・鱗
・角質板
・頸甲
・翼膜支持骨格
など、脊椎動物型の外皮へと再編された。
ここで内骨格は硬骨化し、
「体重支持+捕食機能+防御機能」の中心を担うようになった。
この段階で六脚構造は『脊椎動物型の六肢』として完成する。
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(2)大型化がもたらした進化的利点
大型化ルートの個体群は:
・長寿命化
・神経処理能力の維持(または拡大)
・六肢による高い姿勢安定性
・捕食・滑空・跳躍など高度運動の獲得
・個体ごとの生活圏拡大
を実現した。
このルートから分岐したのが
・スフィンクス類(知性特化)
・ケンタウロス類(山岳大型植物食系)
・有翼人(オルニス:空中移動特化)
・グリフィン類(森林・山岳の頂点捕食者)
・ドラゴン(巨大化+翼化の極致系統)
である。
これらは神話生物としてのみ語られているが、進化学的には『脊椎動物のもう一つの成功モデル』と位置づけられる。
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◆ 3. 大型化と小型化の境界:決め手は“触腕”と“神経脳化”
六脚脊椎動物類の二大ルートは、感覚器(触腕/狭角)の扱いと脳の脳化(三核脳の維持か縮退か)によって方向性が決まった。
系統 ┃小型化(昆虫) ┃大型化(幻獣類)
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神経構造 ┃縮退 ┃維持(高次化)
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触腕・狭角┃触角化(単純化)┃角・副肢として残存
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外骨格 ┃主体 ┃退化
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内骨格 ┃消失 ┃硬骨化
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繁殖戦略 ┃多産化 ┃低産化
脳の縮退か維持かは、「知性獲得 vs 繁殖力優先」という進化の分岐点を象徴している。
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◆ 4. トドメとなったのは「環境分布の偏り」
地球環境は氷期と温暖期を繰り返し、大型動物に厳しい時代、小型昆虫に有利な時代が交互に訪れた。
その結果:
・小型化ルート(昆虫)は絶滅しにくく、爆発的に増えた
・大型化ルート(六脚脊椎動物類)は局所的滅亡を繰り返した
最終的に、小型化ルートは現代まで生き延び、大型化ルートは歴史の中で姿を消し、神話・伝承のみに「痕跡」を残すことになった。
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◆ 結語
六脚脊椎動物類は、小型化と大型化という、両極端の進化戦略を採用しうる構造を持っていた。
その結果、
一方は『昆虫』として大繁栄し、
一方は『神話生物』として文化記憶に残った。
この分岐の理解によって、昆虫の繁栄と六肢幻獣の普遍性を、進化史の中で一つの流れとして捉えることが可能になる。




