表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

【序章】四脚脊椎動物だけが正史ではない。(1)

序章の① なぜ我々は【四脚】しか考えないのか


脊椎動物の進化史を語る際、四肢をもつ生物(四脚動物)が地球上の主たる脊椎系統である、という前提は疑いなく受け入れられてきた。この前提は、現存する脊椎動物がすべて四肢構造(両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類)を共有しているという、目視可能な事実から生じている。しかし、この『当然視された前提』が、果たして進化の全系統を正しく反映したものかどうかについては、これまで十分に検討されてこなかった。


四肢動物(Tetrapoda)は、デボン紀後期に出現した肉鰭類(にくきるい)(Sarcopterygii)から進化したと理解されている。よって現在の生物学では「脊椎動物=四肢」という枠組みが、そのまま進化史の最大公約数として扱われている。しかし、この認識はー「現存種の偏り」ーによって形成されたものであり、太古の環境において同程度に発達しながら現代に痕跡を残さなかった系統を『存在しなかった』と見なす危険性を孕んでいる。


生物進化は、現存種の観察から過去を推測するというー『生存者バイアス』ーの影響を強く受ける。今日、陸上脊椎動物のすべてが四肢であるという事実は、四肢動物が圧倒的に繁栄し、他の可能な系統を駆逐した結果であって、唯一の進化解ではない。実際、生物進化は独立に複数の解を提示しうることが知られており、昆虫に始まる六脚構造(Hexapoda)の成功例はその典型である。にもかかわらず、脊椎動物の系統が四脚以外の形態を採る可能性は、従来ほとんど議論されなかった。


その理由は三つに整理できる。


ーーーーー


(1)化石記録の偏り:軟骨・混成外骨格は残りにくい


脊椎動物の系統推定は、ほぼすべて化石記録に依存している。だが化石記録は、保存されやすい硬骨組織を持つ種に偏っているため、


・軟骨主体の骨格


・外骨格と内骨格の混成構造


・水棲→陸上移行期の脆弱な骨格


といった形質をもつ生物は、構造が残りづらく、系統樹から「存在しなかった」かのように除外されやすい。


もし太古に、外骨格と内骨格のハイブリッド構造を持つ六脚脊椎動物が存在したとしても、残存化石は極めて限定される。その欠落は、そのまま『存在しなかった』という誤った結論へ直結する。


ーーーーー


(2)現存分類体系の固定化:四脚動物中心の視点


生物分類体系は、現存生物を前提として構築されている。

現代の脊椎動物が四脚構造で統一されているため、研究の枠組みそのものが『四脚』を基本単位とする構造へ固定化している。


この体系的固定化は、


・『脊椎動物=四脚』という暗黙的前提


・四脚以外の脊椎系統への関心の欠如


・六脚・多脚脊椎仮説の初期段階での棄却


をもたらし、結果として「四脚以外の可能性を最初から議論しない」という学問的慣性につながっている。


ーーーーー


(3)神話・伝承の誤読:異形の存在を『象徴』として処理した


古代文明は、異形の生物を多数描写している。


・有翼人(天使・迦楼羅)


・人獣混成(スフィンクス、ケンタウロス)


・六肢のグリフィン


・長大な尾と翼を持つドラゴン


これらの存在は、いずれも『四脚の枠組み』から外れている。しかし近代以降の学問体系は、これらを生物学的証拠ではなく、宗教的象徴・寓話的表現としてのみ扱った。


だが、もしこれらの伝承が『生物学的観察の残滓』であったとすればどうだろうか。

現代人が記号化してしまった形象の背後には、かつて四脚とは異なる系統の脊椎動物を目撃した文化的記憶が潜んでいる可能性がある。


ーーーーー


◆ 結語:

四脚以外の脊椎動物を「考えない」のではなく、ー「考えないように教育されてきた」ーだけではないか。


四脚動物だけが繁栄し、六脚脊椎動物類が絶滅したのだとすれば、我々は『勝者の系統』のみを基準に、生物進化全体を語っていることになる。

そのこと自体が、進化史の理解に重大な空白を生み出している。


本書が提唱する「六脚脊椎動物類仮説」は、この無意識の固定観念を問い直し、古代の海にまで遡って脊椎動物の『消し去られた可能性』を再構築する試みである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ