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草原演義  作者: 秋田大介
巻二
107/783

第二 七回 ③

サノウ山塞に縦横の計を披瀝(ひれき)

ナオル草原に敗軍の雄を探索す

 サノウは(ニドゥ)を伏せて最後に言うには、


「以上、私の考えはこんなところです。実際にいつ、どうやって草原(ケエル)版図(ネウリド)を回復するかは、先に述べた五事がすべて成ってからのこと。今どうこう言えることではありません」


 インジャが言った。


「一同まことに愁眉を開く想いです。早速おっしゃるとおりにいたしましょう」


 そこで諸将は話し合って互いの職掌を定めた。それは以下のとおりである。



  盟主にして本塞の主 一名

    フドウ氏族長(ノヤン) インジャ


  副主にして本塞(ネグ)の門の守備 一名

    ジョンシ氏族長(ノヤン) ナオル


  隷民(ハラン)軍の統率および本塞(ホイル)の門の守備 一名

    キャラハン氏族長(ノヤン) セイネン・アビケル


  軍師 一名

    イェリ・サノウ


  新たに築かれる東塞の主 一名

    タロト部ハーン マタージ・ハーン


  東塞の副主 二名

    タロト部右王 マジカン

    タロト部左王 ゴルタ


  新たに築かれる西塞の主 一名

    カミタ氏族長(ノヤン) ドクト


  西塞の副主 二名

    ドノル氏族長(ノヤン) テムルチ

    カミタ氏   オノチ


  新たに築かれる北塞の主 一名

    ズラベレン氏族長(ノヤン) コヤンサン


  北塞の副主 二名

    ズラベレン氏 イエテン・セイ

          タアバ


  新たに築かれる小塞の主 一名

    イタノウ氏族長(ノヤン) マルケ


  軍政を(つかさど)るもの 一名

    ジョンシ氏 シャジ


  兵卒の調練を司るもの 一名

    ベルダイ氏 トオリル


  家畜(アドオスン)兵糧(イヂェ)の管理を司るもの 一名

    ハツチ


  情報機密を司るもの 一名

    オガサラ・ジュゾウ


  大将旗を護持し盟主を守るもの 一名

    フドウ氏 タンヤン



 以上、十九名である。諸将はうち揃って上天(テンゲリ)(まつ)り、拝礼してテンゲリに替わって道を行うことを誓った。そのあとインジャは、(エケ)ムウチを訪ねて事の次第を報告した。


 新設される東塞、西塞、北塞を担うものは早速準備にかかり、またイタノウへは早馬(グユクチ)を送って合流(ベルチル)(うなが)した。またサノウは、ジュゾウとその配下を呼んで情勢を探るべく草原に放った。




 それから十日もせぬうちに、ジュゾウが驚くべき報をもたらした。


「マシゲル部に内乱(ブルガルドゥアン)だと?」


 インジャも思わず大声を出す。


はい(ヂェー)。マシゲルの旧家チャテク家が諸氏と語らって謀叛(ブルガ)を起こしました。チャテク家の当主キャンベルは、よほど周到に用意していたらしく、ジャクー家のハーンは苦戦を強いられています。ギィ殿も一旦退いて態勢挽回を図っておりますが、思うように兵が集まらず苦労しておいでです。これではトシ殿を迎えるどころではありません」


「やられた。先生の言うとおり、ヒスワはマシゲルにも万全の計を施していたか。で、お前の見るところではどちらに利があるか」


 間髪入れず自信満々で言うには、


「ジャクー家でしょう。当家にはギィ殿をはじめ英傑勇将は数知れず、民心も得ております。今はチャテク家が押しているようですが、彼らは利害で結びついた烏合(エレムデク)の衆(・ヂェムデク)、やがて内部から崩れるでしょう」


「それならよいが」


 インジャは傍ら(デルゲ)のナオルらに意見を求めた。サノウが答える。


「これはむしろテンゲリの与えた好機(チャク)です。トシ・チノを探しだして、山塞に迎えましょう」


 ナオルが進み出て言った。


「私が草原に出てトシ殿を連れてきます。セイネンもともに参ろう」


「もちろん。次兄とともに山塞を降りることをお許しください」


「許すも何もない。二人が行ってくれるなら安心だ。きっと見つけてまいれ。サノウ先生、よろしいか」


はい(ヂェー)。トシ・チノは一方の雄。丁重にお連れするように」


 そこでインジャは、言うか言うまいか迷う素振りを見せてから、(ようや)く尋ねて言うには、


「……チハル・アネク殿はどうしたか、聞いているか」

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