サウナ3
和泉は感じたことのない感覚を味わっていることだろう。
水の温度は18度。
プールの水などとは比べ物にならない程冷たい。
なのに、ほんわりと冷たくて気持ちがいい。
まず有り得ない感覚。
俗に言う羽衣である。
これが出来ると冷たい水が緩和され、とても心地よいのだ。
「大丈夫?」
「こ、これなら俺でも平気みたいだ」
「良かった。羽衣効果だね。でもね」
悪戯心が芽生えた夏季は水の中でバタバタと動いてみせ、水風呂に水流が生まれた。
「うおっ! つ、冷た!」
先程まで心地よかったのに急に冷たくなった。
ブルリと和泉は震える。
「羽衣はちょっとした水の流れで崩れてしまうのさ」
「な、夏季ー!」
「あははは!」
急に体が冷えてきた気がする。
和泉は堪らず水風呂から上がった。
夏季もそれに続く。
「まったく夏季は」
「あはは。ごめんごめん。さあ、外気欲をしよう」
「外気?」
頷くとフェイスタオルで体拭いた夏季は、外に出て設置されていた椅子に座った。
「ささ、和泉君も体を拭いてそこに座りなよ。風吹いてて気持ちいいよ」
「う、うん」
和泉は椅子に座ると夏季をチラ見した。
「なあ、夏季」
「まあまあ、和泉君。まずはゆっくりと呼吸して、風を感じるといいよ」
「・・・風?」
夏季はそう言って目を閉じ、和泉もそれに倣う。
さやさやとゆっくり吹き抜ける風が気持ちいい。
水風呂で冷えた体だったが、まだサウナで火照った熱が芯の部分に残っていたのだろう。
冷えたのに体がほんのり温かい。
摩訶不思議な感覚だ。
普段なら有り得ない非日常が堪らない。
「さて、それじゃあもう一セット、行ってみようか」
「ええっ。まだ入るのか!?」
「勿論。サウナは三セットが基本だよ」
「さ、三!」
「もしくは四」
「マジか・・・」
呆然とする和泉を伴って、夏季は再びサウナの前に。
「あっ、和泉君。そこにある給水機で水分補給して」
「あ、そういえば喉乾いた」
「サウナに入ると当然だけど水分出るからね。女性やアスリートはここで水分減らしてダイエットなんて聞くけど、僕らはしっかりと水分取って、健康に気を付けながらサウナを楽しもうね」
「そうだな。じゃあ、早速いいか? 気がついたら喉が渇いて渇いて」
「どうぞどうぞ」
渇きを覚えた和泉は給水機のボタンを押し、水をがぶ飲みした。
「美味い。いや、これミネラルウォーターか? 普通に美味いぞ」
「うん。ここのは美味しいよね。我慢していた分、猶更美味しいでしょ」
「こ、これならいくらでもイケるぞ。ゴクゴク」
「あんまり飲み過ぎないでね。お腹壊すよ」
水を飲みながら、和泉はコクリと頷いた。
和泉の後は夏季も喉を潤し、2人は再びサウナに入った。
再び、通常の気温から90度越えの異空間へ。
今度は和泉も経験していたので驚くことなく腰を下ろす。
いつの間にかテレビはバラエティーからニュースに変わっていた。
正直バラエティーには興味がなかったが、ニュースであれば知っておかなければならないこともあるだろう。
和泉は今回もテレビに目を向けているし、夏季も視線を向けた。
テレビのいいところはサウナの暑さを紛らわせてくれることだ。
夏季は気にならないが、人によってはただ我慢しているこの時間が苦痛に感じる人もいるだろう。
そんな時、このテレビは有難いのだ。
和泉もそんな感じかもしれない。
「なあ、夏季。サウナって何分くらい入るのが正しいんだ?」
「うーん。一般的に10分前後って言われているけど」
「そんなにか? さっき俺達7分くらいしかいなかったよな?」
そういえばそれくらいだったか。
和泉は驚くが、夏季は首を横に振る。
「あくまでも目安ね。サウナは我慢大会じゃない。自分のコンディションで決めていいんだ」
「そ、そうか」
「そうだな。脈拍で決めていいかもしれない」
「脈?」
「そう。脈が速くなって鼓動が聞こえてきたら、出る合図かもね」
「そうか。じゃあ、そろそろ?」
夏季はチラリと時計を見た。
「そうだね。さっきと同じくらいだ。出よう」
2人はサウナから出て水風呂へ。
さっき経験をした和泉は、臆することなく水を被って水風呂へ入った。
羽衣の力は偉大で、一度肩まで沈んでしまえば、それ程冷たくはない。
1,2分程浸かったら外気欲へ。
そして、水分補給して再びサウナ。
このローテーション。
「なんかキタ?」
「え、何かって?」
「・・・まだか」
夏季は残念そうにそう言った。
一体何がくるというのだろう?
和泉は首を傾げた。
「さて、時間的にそろそろかな」
「何がだ?」
「入れば解るよ。さっ、行こう」
「お、おお?」
三度目のサウナ。
夏季は含みのある言い方をしたが、特に何も変わらない。
和泉は再び首を傾げた。
そこへ、
「失礼しまーす。これからロウリュウを開始します」
従業員さんがやって来た。
いきなりのことで和泉は戸惑う。
「え、何だ? 何が始まるんだ?」
「ロウリュウさ」




