対戦
2人の対戦が始まった。
朱希が選んだのはいつも自分が使っているキャラだ。
そう、朱希はこのゲームをやったことがある。
ここは経験者2人のガチバトルだ。
夏季はそぉっと朱希に近づく。
そしてこしょっと。
「上手くやれよ」
「任せてよお兄ちゃん」
最初の対戦では、健太は朱希に簡単なレクチャーをした。
「これがパンチでこっちがキックでこれがガード。で、この表に書かれているコマンドを入力すると必殺技ね」
「ふむ。解ったわ。ちょっと練習してもいいかしら?」
「どうぞどうぞ」
もう当然知っていることではあるが、朱希は練習の真似をした。
どうやら夏季の忠告通りに最初は初心者を演じるようだ。
「理解したわ。じゃあ、やりましょう」
「よし、対戦開始だ」
まずは様子見として、健太も手加減。
朱希は基本的な攻撃を繰り返すも、全てガードされ、攻撃を加えるさせることが出来ない。
健太もそろそろ攻撃に移り、朱希は押される一方だ。
最後の方は朱希も健闘したが、結局のところ健太の圧勝で終わった。
「・・・負けてしまったわ」
「いや、四季さんセンスいいよ。最後の方は中々いい戦いだった」
「まだ決着はついていないわ。さあ、次よ」
「よおし」
第2戦目。
ここで夏季以外予想もしえなかったことが起こった。
朱希が打って変わって猛攻を開始したのだ。
「えっ、嘘だろ?」
健太も驚きながら反撃し、試合は完全に互角。
健太の攻撃に朱希は見事カウンターを入れ、朱希が勝利した。
「・・・」
健太はぽかんと口を開けた。
「これで一勝一敗ね」
「う、うん。そうだね。はは、ちょっと手加減し過ぎたかもしれないな」
「それじゃあ、最後の対戦よ」
「っつ」
最後の戦いは完全に朱希が押していた。
健太はライフを半分くらい減らすことが出来たが、最後は超必殺技を喰らいあえなく撃沈。
『K・O』
茫然自失。
まさか完全初心者に負けるなど有り得ないと思っていたのだろう。
健太は放心していた。
まあ、健太の腕前はおそらく夏季と同程度。
そして、夏季はほとんど朱希に勝ったことがない。
ならばこの結果は当然と言えた。
(おいおい。上手くやるんじゃなかったのか?)
どう見ても初心者の動きではなかった。
「は、はは。四季さん本当に初めて?」
「ええ、初めてよ」
「そ、そうなんだ。まさか初心者に負けるとは思ってなかったなぁ、は、ははは」
(健太君。そうがっかりするな。こいつのやり込み量は君を凌駕するぞ。多分)
夏季は憐れみの視線を健太に送った。
「かおりもやってみる?」
「ええ、あたし? いやいや、今の戦いを見る限り、とてもじゃないけど朱希ちゃんに勝てるとは思えないよ」
「大丈夫よ。こんなの遊びよ遊び。手加減してあげるから」
「そ、そう? うん。じゃあやってみようかな」
「ふふ、じゃあ対戦開始ね」
『K・O』
朱希。ノーダメージ勝利。
(お、大人げねぇーーーー!!)
まさか全く手加減なくかおりを倒すとは。
かおりは自分がどうやってやられたのかすら分かっていないだろう。
「え、えーと。負けちゃった」
「いい勝負だったわかおり」
「い、いい勝負だったのか、なぁ~?」
かおりは苦い笑いを浮かべた。
その後、4人は色々なゲームに挑戦し、朱希は独走状態で突っ走った。
普通に考えればこれで初心者など有り得ないのだが、朱希のキャラクターを知っている健太とかおりはまさか朱希がガチゲーマーだとは夢にも思っていない為、素直に感心する。
夏季としては苦笑いを浮かべるしかない。
「そろそろ何かお腹に入れようか?」
もうすぐ正午だ。
皆お腹が減ってきた頃合いだろう。
3人はこれに賛成した。
「ここ、フードコートもあるみたいだね。行ってみよう」
夏季がそう言うと、4人はフードコートに向かった。
「・・・唐揚げ定食がない」
夏季は肩を落として、うどんを手繰った。
朱希は白い目でそれを見ている。
「あなた、どこでも唐揚げを食べようとするのね。栄養が偏り過ぎるわよ」
「う。確かにそうだね」
おそらくこれは朱希の本音だろう。
確かに最近の夏季は唐揚げを食べ過ぎている。
お腹の中が油っぽくなっているかもしれない。
この間唐揚げを所望した朱希に言われるのはなんだか癪であるが。
そういう朱希はカレー。
健太はラーメンで、かおりはアジフライ定食だ。
何故アジフライがあって唐揚げがないのかが納得いかない夏季である。
「レジャー施設のフードコートと馬鹿にしていたけど、これは甘く見たな。普通に旨い」
そう言いながら健太もラーメンを食べている。
どうやら夏季と同じ意見のようだ。
夏季のうどんも京都だしであっさりとしていながらも、コクのある味わいである。
「これ食べたら何やる?」
夏季が尋ねると健太が視線を上へと上げた。
「俺さ。あれやってみたいんだけど」
指さす先はボルダリングの壁だ。
「健太君。ボルダリングやりたいの?」
「ちょっと興味あってね。駄目かな?」
「いいよ。丁度腹ごなしになるし。やってみようか」
「私はやらないわ。スカートだし」
「あはは、あたしもだね」
朱希は素っ気なく、かおりは笑いながら答えた。
これはスカートでよかったかもしれないと夏季は思った。
朱希の手は未だにボーリングの疲れでまだ力が十分に入らないだろうから。
「ごめんね。なんだったら俺達がやってる間に違うアトラクションで遊んできていいよ?」
「いいわ。2人のやっているところも見たいし、かおりもそれでいい?」
「いいよ。あたしも見たい」
「それじゃあ、やってみようか」
夏季は笑顔で答えるとうどんのつゆを飲み干した。




