ゴールデンウィークを満喫しよう
「おおーー」
夏季は興奮で声を上げた。
やってきましたゴールデンウィーク。
夏季、朱希、健太、かおりは大型複合アクションスポーツ施設にやって来ていた。
まだできたばかりなので建物は真新しく、白い壁は汚れも見当たらない。
やっぱり人は多いけど。
3階建てらしく、各階ごとに様々なアトラクションがあるのだろう。
カーンと高い音が聞こえそちらを向くと、どうやら施設の外に設置されたバッティングセンターから聞こえて来るようで、誰かがボールを打ったのだろうと想像できた。
夏季はパーカーにデニム。
健太はカットシャツにこちらもデニム姿である。
「じゃあ、入ろうか」
「そうね」
「おー」
朱希はパフスリーブワンピース。
かおりはサマーニットにチュールスカートである。
朱希は見慣れているが、かおりの私服は新鮮だ。
夏季を先頭に4人は施設内へと入ると、先ず聞こえてきたのは騒がしいゲーム音。
どうやら1階はゲームセンターらしい。
ジャラジャラとかなり大きめな音が耳を打つ。
多くの筐体機を前に、夏季は圧倒された。
街中にあるゲーセンとは規模が違う。
それは他の3人も同じ様子だ。
「す、凄いね」
かおりはポカンと口を開けた。
そもそも、ゲーセン自体あまり来たことがなかったのだろう。
健太もキョロキョロ見回している。
そして、朱希も。
(めっちゃそわそわしてんな)
健太とかおりは気づいていないが、朱希は小刻みに震えている。
チラ。
チラチラチラ。
(今度はこっちをチラ見してきたな)
これだけチラチラこっち向くと、もうガン見してるのとほぼ変わらない。
2人が気づいたらどうフォローしたらいいのだろう。
夏季は即興のアドリブにあまり自信がない。
ともあれ、これはなんとかゲーセンに行く流れを作らなければならないだろう。
「あー、じゃあゲーセン行こうか?」
ちょんちょんとゲーセンを指さし、2人の意見を伺うと、健太が思案するポーズを取った。
「いや、先にボーリング行こうよ」
「「え゛」」
思わず、夏季と朱希の声が重なってしまった。
「今日は遊び倒すつもりだしさ。先に体力を使うアトラクションをやった方がいいと思うんだ」
なるほど、そう言われると正論だ。
ゲーセンは逃げないのだから、先にボーリングでもいいだろう。
しかし、視線を朱希に移してみると、完全に硬直していた。
朱希にとっての最優先事項は目の前にあるゲーセンだ。
ぶっちゃけ施設のサイトを見た時から、朱希の気持ちはゲーセンしかないのだろう。
「そ、そうだね。確かにその通りだ。じゃあ、ボーリング場に行こうか」
ガバァ!!
勢いよく朱希の視線がこっちに向いた。
夏季がチラっと朱希を見ると『裏切り者!!』と顔が言っている。
(いや、しょうがないじゃん。健太君の言ってること間違ってないし)
なんとかフォローを入れよう。
じゃないと、後で何を言われるか分かったものではない。
「まあ、ゲーセンは後でも出来るもんね。そう、後で、後で遊ぼう。後で」
とにかく『後で』を連呼した。
ゲーセンで遊ばないわけではないぞと、暗に朱希に伝えておく。
チラ?
若干むすぅ~っとした顔をしているが、怒り状態からは脱したようだ。
まあ、後に回されたことは不満なのだろうが。
案内板を見ると、ボーリング場は3階らしい。
4人はボーリング場に向かい、受付を済ます。
靴をレンタルすると、今度はボール選びだ。
各々ボールを選んでいる。
「10くらいでいいか」
重さと指のサイズを確認し、いよいよゲーム開始である。
まずは朱希からだ。
「朱希ちゃん頑張って」
「ええ」
朱希の第一投。
綺麗なフォームから、見事なストライクコースを描き、ストライク!
「朱希ちゃん。カッコいい!!」
やんややんやとかおりがはしゃぐ。
振り返った朱希は髪をなびかせドヤ顔だ。
「大したことはないわ」
目を伏せ、余裕の微笑を浮かべる。
(いい顔してんな~)
今度は夏季の番である。
慎重に構え、第一投。
コースは悪くない。
朱希の第一投を思い起こさせるボールの軌道だ。
しかし、ここからが違った。
夏季のボールは右から左に大きくカーブを描く。
それはストライクコースから外れ、ガーター寸前で1ピンだけ倒した。
「「・・・」」
ぎこちなく振り返ると、そこには微妙な顔をした健太とかおりの姿が。
夏季はますます居心地が悪くなった。
そして、
「ぷっ」
朱希が笑う。
「ぐっ」
ボールが戻って来て夏季の第二投。
「まだだ。まだ慌てるような時間じゃない・・・」
さっきは左に大きく曲がった。
ならば、あらかじめもう少し右側から投げればいいのでは?
夏季は右端ギリギリに立って、構えを取る。
夏季、第二投。
ゴロ、ガタン。
投げたボールはひと転がりすると、そのままレーンを外れ、ガーターとなり、無情にもボールは消えて行った。
夏季、1回目、倒した本数1ピン。
「「・・・」」
振り返れば、健太とかおりの気まずげな表情。
そして、
「ぷっ」
夏季は顔を引きつらせた。
ゲームは順調に消化していった。
結局第1ゲームの成績は、
朱希174
夏季99
健太123
かおり105だった。
朱希の圧勝である。
「朱希ちゃん。ボーリング上手いねー」
「まあ、人並み程度にはこなせるかしら」
涼し気な表情で微笑を浮かべ、チラリと朱希は夏季を見る。
「ふっ」
ドヤー。
夏季は唸った。
朱希はインドア派なのだが、運動神経はいい。
ボーリングもお手のものというわけだ。
対して夏季の運動神経はというと、スコアが全てを物語っている。
「2ゲーム目いく?」
「うん。いこういこう!」
健太が問いかけ、かおりが快活に応える。
2人はのりのりなのだが、夏季はちょっと困った。
さっさとゲーセンに行かないと、朱希の機嫌が悪くなる。
それに、もう一つの懸念があった。
朱希の方を見れば、困った顔をしているものの、こう零す。
「まあいいわ。かおりがやりたがっているのなら」
(ほう?)
てっきり我儘を言うかと思ったが、どうやらかおりを大事にしているらしい。
体が弱いことを心配されるとムキになって怒るが、基本は友情を優先しているようだ。
こうして、2ゲーム目が始まった。




