街にも色々ある
ガゼルの街は異様な光景に見えた。人間がいない。いるのはケモノだ。しかし二足歩行で言葉も通じる。
「とりあえず宿に行くか」
「うん」
俺達はロビーで一泊することを伝えた。
「人間500ゴールド、聖獣1000ゴールドです」
「た、高くないですか?」
「うちは人間と他のケモノに厳しいの。ほら、早くお金頂戴」
「わかりました」
俺は渋々払って鍵を借り、部屋に入った。さっそくシャワーを浴びたが、水しか出ない。ああ、元いた世界でもそういう国があるって聞いた経験が。
「福ちゃん。寒い」
暖炉に薪だけは入っていたので福ちゃんに火を付けてもらった。
「あったけえ……」
「たかちゃん、ここなんか怖いよ」
「どういうところが?」
「人じゃないケモノが」
「猫なのに?」
「苦手なものはあるわよ。早く街を出て行こう」
その時だった。何か大きな声が聞こえたので窓を開けてみると、ケモノの集団が集まっていた。みんな叫んでいた。
「人間は早く出ていけ! 猫族も出ていけ!」
「福ちゃん、確かに怖いわ」
福ちゃんはポウっと雷雲を出すと雨と雷を降らせた。
「うわあ、あの人間魔術を使うのか!?」
福ちゃんがやっているとは思われなかったようだ。ケモノ達は解散した。
「ありがとう福ちゃん。ここは一晩で出て行こう」
「それがいいよ」
俺達はくっついて寝た。
翌朝、モーニングの時間、出たのはサラダだった。以前泊まった宿では肉がよく出てきた。
「草食動物なのよ。たぶん」
と福ちゃんが言うと、ウエイトレスのケモノが、
「まあ肉食なんて汚らわしい!」
と聞こえるように言ってきた。ストレスが溜まるな。
「ありがとうございました」
と言い、鍵を返すとサービス代と言って300ゴールド追加で払わされた。酷い街だ。
次の街はどこですか? と聞いたが、
「次の街? ほら」
と、手を出して来た。俺は100ゴールド渡してあげた。
「ライム村があるけど魔王軍に占領されてるよ」
「そうですか。方向は?」
「北東」
「ありがとうございます。そこは幹部もいますか?」
「知らないね」
「わかりました」
俺はさっさとここを出たかった。しかし、この時はまだこの街に戻らなければいけないことなど誰が想像できただろうか……。
俺達は北東へ歩を進めた。少しだけ歩いただけでもうライム村はあった。
「近いな」
「何だお前!?」
「いきなり人型モンスターが話しかけてきた。
「うるせえよ」
俺は刀を一閃させるだけでそいつを倒せた。
「たかちゃん、強くなった!」
福ちゃんに褒められて俺は鼻高々だった。しかし……。
「オラ、話はまだ終わってねえそ」
そいつは復活した。確かにゴールドが落ちなかった。
「俺はゾンビなんだよ」
福ちゃんが激しい炎を吐いて焼き尽くした。今度はゴールドが落ちた。それを拾い、
「福ちゃん強いなあ。それにしてもここはゾンビに占領されているのか。いくぞ福ちゃん」
「うん」
村へ入ると一見ゾンビには見えない三人組がバーの軒先でビールらしきものを飲んでいた。じろじろ見られた。
「たかちゃん」
「どうした?」
「いま小声で人間だ、って言ってた」
「耳良いな」
そしてその三人組はこっちに向かって歩いてきた。
「てめえ人間だな」
「そうだが、何か?」
「血を吸わせろ」
「やだね、福ちゃん、あれを使おう」
「いいよ」
俺は刀を抜き、福ちゃんは炎を吐いた。刀にまとわり付いた。
「そ、それは炎か?」
「そうだよ、くらえ!」
俺は三人斬り倒して燃やした。
「たかちゃん、強くなったね」
「福ちゃんのおかげだよ」
そう言った刹那、俺はゾンビ数十人に取り囲まれた。
「こいつは……」
「やるしかないよ、たかちゃん」
「そうだな」
俺達は必死に戦った。途中打撃攻撃も受けたが、多少の痛みで済んだ。確実にレベルが上がっている。そして、
「ラスト一匹!」
と、最後のゾンビも斬り倒した。
「さすがに疲れたな……」
「あたしも、それにお腹空いた」
と言っていると、後ろから足音がする。誰かが現れた。
「すばらしいねえ」
一目でゾンビとわかる顔をしていた。
「私はゾンビのボスだよ。名前は、特にない。適当に呼んで」
「たかちゃん、こいつ強いよ」
「わかるか、福ちゃん。しかし俺達にはもう体力が……」
福ちゃんは初めて風の息を吐いた、渦となって雑魚ゾンビの落としたゴールドを俺の元へと運んだ。
「たかちゃん、逃げよう!」
「それしかないな!」
俺達は村の入り口を目指した。ボスは何かを詠唱すると村の入り口に壁型のゾンビを作った。壁型のゾンビ、初めて見る。しかし福ちゃんはそれを一瞬で燃やし、俺はゴールドを拾い、ガゼルの街へ向かった。
「ほう、あの猫族……」
俺達は必死に逃げていった……。