もう諦めない
俺とメルルは街の外へ出た。
「福ちゃんはどこだ!」
「あちらの方向です! 感じます!」
メルルが示す街の東の方へ向かった。すると福ちゃんが炎を吐いて地面から次々と生えてくる兵隊を燃やしていた。その近くにヤバそうな男が立っていた。
「すごいパワーを感じます!」
「福ちゃん!」
「たかちゃん、来たの?」
「ごめんな! 俺不甲斐なくて……」
「もういいわ、こいつら倒そう」
「ああ!」
「地面から生えてくるのは植物系です! 福ちゃんの炎が効くのも特徴です!」
「こいつら無限に生えてくるわ」
「あの幹部を倒さなければ!」
幹部の男は左腕を地面に埋めていた。あれが原因か。
「俺がやる!」
「何だあ、お前は?」
俺が向かって行くと右腕が伸びて殴られた。顔に当たり、跳ね飛ばされた。頭がクラクラしている。一撃でこのザマだ。
「たかちゃん!」
福ちゃんが近づいて回復させてくれた。
「やっぱり一撃でこのザマか……」
メルルが炎の魔法を使い、幹部の男の左腕を焼き切った。
「ぐあっ……貴様はメルルか、何故こんな所にいる?」
左手を修復しながら男は言った。兵隊はいなくなった。
「この人たちの手伝いをしているの!悪い?」
「その男は聖騎士団か?」
「俺はまだそれ以下だ」
「だろうな、そんな程度じゃ聖騎士団になれはしない」
「なんだと!」
聖騎士団とはそれほど強いのか。
「私は彼なら聖騎士団になれると信じてる!」
「くっくっく……」
左腕の修復が終わったようだ。
「注意すればいいのは魔導士のお前とその猫族だけだな」
「クソ!」
俺はまた向かっていった。注意するのは伸びる腕だけ。やつはまた伸ばしてきた。右腕を交わした。しかし左腕を同時に伸ばしていたのでそっちに捕まった。俺は植物になった腕に巻かれ、全身の骨と肉が割れそうな痛みを味あわされた。しかし福ちゃんとメルルがまた腕を焼いて助かった。そしてまた福ちゃんが回復してくれた。
「ずるいぞ猫族。先に倒すか」
するとまた地面に腕を突っ込んだ。福ちゃんの足元から植物が生えてきて絡まった。
「福ちゃん!」
メルルは魔法陣を出して何かを詠唱している。俺は福ちゃんの足から植物を剥がすのに必死だった。
「たかちゃん、あたしは自分で何とかする! メルルがすごい魔法やりそうだからそれまで戦って!」
「でも」
「早く!」
「わかった!」
今は片腕だけに注意すればいい。一つならばさっきは避けられた。
「うわああああああ!!!」
俺は突っ込んだ。片腕を避け本体に初めて攻撃できた。しかし……。
「全然痛くねえなあ」
と言われ、蹴られた。俺はふっ飛ばされた。なんて弱いんだ俺は……。
「くそ……」
そこでメルルの詠唱が終わった。
「大魔法ファイアトルネード、ネオバージョン!」
すると天から炎が降ってきて渦を巻いた。恐ろしいほどの威力だった。
「ぐああああああああ!」
福ちゃんの足からも植物が消えた。燃えながら敵の幹部は言った。
「貴様にそれほどの力をあったとは……!」
「あたしだって成長しているのよ!」
「貴様は魔王様の……」
と言って、消え去った。10万ゴールド落ちていた。
「痛い!」
福ちゃんの様子がおかしい。
「左の後ろ足が痛いの……」
メルルが近づいて言った。
「これは折れていますね」
メルルは右手を福ちゃんの足に置くと目をつぶった。
「気持ちいい」
「はい完了です!」
「痛くなくなった!」
「よかったな福ちゃん!」
「うん!」
しかし敵の幹部が最後に言ったことが気になった。
「メルルさ、昔も戦ったことあるのか?」
「……」
「どうした?」
「母親を、殺されました」
皆しばらく沈黙した……。
「ごめん」
「いいんです。それで私修行をし、魔導士になりました。昔はただ指の先に炎を灯すとかその程度だったんです」
「頑張ったんだ……」
「だからです! だから私はあなたにも諦めてほしくなかった!」
「……わかった。しばらくこの辺のモンスターを狩るよ」
「私は剣士をもっと探さねばなりません……。そろそろお暇します」
メルルはフッと消えていった。
「たかちゃん、頑張る気になった?」
「俺はもうどんなことがあっても諦めない」
「その意気よ!」
俺達はそのままの勢いで周辺のモンスターを狩り続けた。俺は福ちゃんのアシストも受けながら、どんどんレベルを上げいった。
そして恐らくレアモンスターであろうノッポなゴブリンにもまた遭遇したが、今度は真っ二つに斬ることができた。
俺達は疲労と空腹のなか、宿へと戻っていった……。