俺のかわいい猫の福ちゃん。
俺は道場で竹刀を振っていた。俺の名前は三上貴明。中学で剣道部に入った俺は高校でも続けていた。現在3年生で剣道の推薦で大学入学も決まっている。今日も稽古を終え自宅に帰った。
「何か嫌な予感がするんだよなあ……」
俺はそう思っていた。翌朝、部屋に突然魔法陣が広がった。その中心から女性が出てきてこう言った。
「えと、あなたが三上貴明さんですか?」
「え? まあそうですけど、あなたは誰なんですか突然」
「私はメルル! 表の世界から剣士を集めています!」
「剣士?」
「今裏の世界では魔王軍と聖騎士団が戦っています。私はあなたをスカウトします!」
「いやあの何を言っているのか全く分かりません」
「行きますよ! 魔法陣から外に出ないでください!」
「いやこんな狭い部屋じゃ出ないも何も……って俺いきなりそっちの世界に行くんですか!?」
「ワープ!」
その時……。
「にゃー」
「うん?」
「あら?」
転生した世界は中世ヨーロッパという感じだった。そして……。
「ここどこ?」
「福ちゃん!」
「ふくちゃんってこの猫ちゃんのことですか?」
「そうだ……」
「たかちゃん」
「うわ! 喋った」
「あたしの言うことわかるの?」
「あ、ああ」
「ここでは動物も喋りますよ」
「猫ちゃんは役立ちますよ。だって口から……」
そのとき福ちゃんがアクビをした。すると
ゴオオオオオオオオオオオ!!!
っと炎が出た。メルルの服が燃えた。
「きゃ! 酷い! リターン!」
燃えた服が戻った。
「すごーい」
「いや福ちゃんのほうがすごいよ……」
「このように猫ちゃんは炎を吐くことができます。それ以外に出せるブレスもありますよ!」
「冷気も?」
「はい! と猫ちゃんの説明が済んだところで剣士登録へ行きましょうか!」
「ちょちょちょ待って! 元の世界には戻る条件は?」
「魔王を倒せば!」
「やっぱりゲームみたいなのと一緒なんだね……」
「ゲームって言う人結構いますね! よくわからないですが」
「福ちゃん、早く帰れるようにさっさと魔王倒しちまおうぜ……」
「そうね。飼い主と喋るの恥ずかしいわ」
「あら! この猫ちゃん……福ちゃんでしたか、左目がありませんね?」
「うちに迷い込んだ時には既に栄養失調で……。片目が白くなってたんです。そしていつの間にか取れちゃったみたいで」
「それで飼ってあげてたんですね!」
「まあうちには当時他の猫が二匹いたし、三匹になるのも同じかなって……」
「なるほど! いい人なんですね貴明さんは!」
「いや病院連れてったりするのは俺の母親だし、あまりかまってやれなかったな……」
「何か暗くなってきてますよ! だったらこの世界でもっと仲良くなればいいじゃないですか!」
「それもそうかな」
「そうですよ!」
「じゃメルルさん。剣士の登録場所に連れて行ってください。俺は魔王を倒して元の世界に帰ります」
「はい!」
「福ちゃんついておいで」
「はーい」
俺達は剣士の登録所に向かった。
「絶対に許さんぞ魔王! 俺は推薦で大学決まってんだ! 学校に迷惑がかかる!」
「あっ! 大丈夫です。魔王倒せればワープしたその時に戻れるみたいですから!」
「マジか。じゃのんびり行くか」
「のんびりはいけません!」
メルルに怒られた。俺達はどうなるんだ……なあ、福ちゃん……。